過去問・中央大学経済学部(3年次編入試験・2018年度)

経済および経済学の基礎知識

(B)
冷戦後に進展したグローバル化は、他方で、国内における労働者の所得の減少をもたらしたと言われるが、その理由を説明しなさい。

解答の着想

1.
冷戦後に進展したグローバル化が世界経済にもたらした潮流を的確に論じる必要があります。1995年にGATTは世界貿易機関(WTO)に改組されます。GATTもWTOも閣僚会議による多国間貿易交渉の場なのですが、WTO発足後は次第に多くの発展途上国がWTOに加盟します。そして、たとえば発展途上国の関税率が先進国の関税率より高いことなどが原因で、およそ150ヵ国を交えた多国間貿易交渉はとても難航するようになります。こうした事態を背景に、地域貿易協定(RTA)が急速に増加します。これは少数の国の間で合意を得られれば締結できる協定です。たとえばアメリカ・カナダ・メキシコの3ヵ国による北米自由貿易協定(NAFTA)などが有名です。

(出典:『国際経済学をつかむ』p183、著、石川城太、菊池徹、椋寛)

2.
NAFTAが良い具体例ですが、自由貿易協定(FTA:域外の国が域内の国に輸出する際に域内各国が独自に輸入関税を決められる協定)の場合、たとえば日本が、アメリカ・カナダ・メキシコのうち最も低関税の国に輸出し、そこから他の2ヵ国に再輸出する(迂回輸出をする)可能性がでるため、原産地規定と呼ばれるルールが採用されています。これは域内で輸出入する財について、ちゃんと域内の国が原産地かを確認してから無税が適用されるルールです。

3.
原産地規定は、企業に生産拠点の移転を促します。たとえばアメリカに無税で自動車を輸出したい自動車メーカーは、たとえばメキシコへ生産拠点を移転します。これにともなう国内の雇用減を理由に国内の労働者所得が減少する可能性があります。(c.f. 産業の空洞化)

4.
なお国際経済学の入門的トピックである「比較優位」「特化」「貿易利益」など参照すれば、貿易自由化はむしろ国内における労働者の所得の増加をもたらすと期待される点も留意しておきましょう。

(出典:『国際経済学をつかむ』p25、著、石川城太、菊池徹、椋寛)

【参考:『国際経済学をつかむ』著、石川城太、菊池徹、椋寛

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