人身売買とマフィア国家

資料1.トラフィッキング(「人身取引」ないし「人身売買」)とは、性的搾取、強制労働、臓器摘出などの「搾取」を目的として、脅迫や詐欺、欺もう(相手を錯誤に陥らせるように事実をいつわること)などの「不法な手段」で、人を「取引」する一連の行為のことです。(中略)2008年8月に公開された映画「闇の子供たち」は、途上国の村落に住む貧しい家庭の子どもたちを安く買い集め、都会の売春宿に売り飛ばし、臓器移植を待つ先進国の患者のためにその臓器を生きたまま摘出するという衝撃的な内容で、日本の人びとにトラフィッキングという犯罪の存在を強く印象づけました。

資料2.北米自由貿易協定(NAFTA)の発効前後から急成長を始めた国境のマキラドーラに勤めようと、地方からやって来た若い女性たちは、十代から外へ出て働くため、新自由主義的グローバル化に刺激されて深まる金権主義の下、性産業の格好のターゲットになった。そして人身売買の犠牲となり、殺されてきた。麻薬カルテルが、武器の密輸や人身売買などにビジネスの幅を広げるようになってからは、この問題がメキシコ各地で深刻化し、そこに地方の政府や警察、軍の関係者が絡むことで、事態は悪化の一途をたどっている。

■意見

1948年12月10日の世界人権宣言で人身売買は明確に「禁止」とされた。しかしこれは必ずしも人身売買を世界から一掃できたわけではないのだろう。国と国をまたいだ人身売買とは奴隷貿易まで遡ることができ、そして現に執り行われる事例(上記)を考えると、その前後で人身売買が「犯罪」というカテゴリに括られたに過ぎない現実を痛感する。人身売買は「マフィア」の仕業になり、必ずしもマフィアと対立しない政府を「マフィア国家」と呼ぶ場面も国際関係論の分野で散見されるようになった。ただし犯罪が犯罪として国をまたぐのであれば二国家の犯罪だ。つまりマフィア国家と取引すればマフィア国家なのである。しかし、たとえば現代日本を、ではそのようなケースで国際社会がマフィア国家と指摘できるかと言われれば、指摘できないのではないか。

資料1.『国際関係論へのファーストステップ』編著)中村都 法律文化社 ※2011年出版の第一版のほうです。高校公民科の延長で読めます。新版もおすすめです。

資料2.『マフィア国家 メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々』著)工藤律子 岩波書店 ※多国籍犯罪について一冊は読んでおきたいでしょう。

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