過去問・東京経済大学経済学部(3年次編入試験・2023年度)

問題Ⅱ
近年、テレワークや週休三日制など、働く場所や時間の選択肢を増やそうとする動きが広がっています。こうした動きは企業と労働者にとって、それぞれどのようなメリット、デメリットがありますか。あなたの考えを述べなさい。

解答例
キャリア形成とは、仕事を通じて経験やスキル等を蓄積して自己実現を図っていくプロセスのことだ。キャリア自律とは、変化する環境において自らキャリア形成と学習を主体的かつ継続的に取り組むことである。テレワークや週休三日制は、社内にいる時間を物理的に減らすぶん他の労働者と共有する時間は減る。そしてキャリア形成は、社内時間の蓄積によるものではなくなっていくから、キャリア自律で勉強時間を確保できる人と、そうでない人とで差が生じてくる。コロナ禍のテレワークでも、メール送受信など雑務におわれた人と自由な勉強時間に余裕のあった人とで分かれたと言う。
経団連が「年功序列賃金制度、終身雇用制度の崩壊」を明確にメッセージングしたのは2019年頃だ。いま企業が最後までキャリアの面倒を見てくれない時代だから、所属する企業でならば通用する経験やスキル等の価値は相対的に落ちてきている。日本型雇用慣行の変容に合わせた働き方が促されるメリットが予想される。しかしキャリア自律で勉強する機会を平等にしたり、キャリア自律そのものの訓練(例えば労働市場で通用するデータサイエンティストとは何かについてのセミナーは、データサイエンスのセミナーとは違う)を実施したりしなければ、労働者の不平等になったり、キャリア形成の出来た人材が過小になり企業が市場競争で負けたりするだろう。あるいは、企業が必ずしも自社の業務で活かされない経験やスキル等の為に投資せず、そこは労働市場にフリーライドして、出来上がった人材ばかりを労働市場で買って済ますかもしれない。そのようなデメリットが予想される。

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