法学:法と道徳の関係

NOTE(最終更新日2021/12/5)

サムナー(W.G.Sumner)のフォークウェイズ(Folkways)

経験科学(生きている人間についての科学)は、人間行動が(自己欲求を満たしつつ不利を辞める試行錯誤を通じて)環境と条件のもと通路にはまるとする。これを従来の日本語で「(一個人の)習慣」と呼ぶことができる。習慣は多かれ少なかれ社会の人びとによって共有されるものであり、社会的な広がりのなかで存在するものとして眺められる場合にはこれを「慣習」と呼ぶことができる。慣習が多かれ少なかれ命令的(規範的)な力をもち、ある程度に固定的、普遍的、統一的であるときWilliam Graham Sumnerはフォークウェイズ(Folkways)と読んだ(日本語の「習俗」に近いのではないか)【出典:川島武宜、1958「法と道徳」『法哲学年報 1957年版』有斐閣:32-53.】

サムナー(W.G.Sumner)のモーレース(mores)

フォークウェイズのうち、社会福祉、社会の幸福、共同生活の幸福といった説明を伴うもの。正しい、善いとされる習俗である。
■フォークウェイズ:命令的(規範的)な慣習
■モーレース:善いことだから行えと命令的(規範的)な慣習
⇒「道徳」とは、モーレースの一種に他ならないだろう。
サムナーにとって morals や morality とは、
× 現実の生活行動の現象としての道徳を観念するもの
〇 宗教や政治や思想から分離された領域を観念するもの
だから、後述の理由から、区別するために、モーレース(mores)ということばを用いた。道徳に関する研究が経験科学としての社会科学であるためには、道徳が絶対的な原理で根拠づけられるよりもむしろ、習俗の一部分として道徳を眺めることになる、だからモーレース(mores)ということばを提唱した。【出典:川島武宜、1958「法と道徳」『法哲学年報 1957年版』有斐閣:32-53】

ジョルジュ・ギュルヴィッチ(G.Gurvitch)の法規範と道徳

法規範の目的が「和解、仲裁(reconciliation)」であることに従って、法が命令する行為は限定的かつ確定的であり、これに反し道徳義務は無限定的・非定量的である。ここで言う「法規範」とは独裁者の為のものである場合は除き、法規範は通常、社会構成員の支配に留保された一定の利益範囲(=「権利」)を保障するものである。

ゲオルグ・イェリネック(Georg Jellinek)の法格言

「法は道徳の最小限である」

ルドルフ・フォン・イェーリング(Rudolf von Jhering)の法格言

「強制を欠く法というのは自己矛盾である」

荒木尚志の説く努力義務規定の意義

努力義務規定(法的拘束力なき法)は、一定期間経過後に努力義務が強行規範に変更される例は少なくないから、努力義務規定の意義は「純然たる訓示」として評価するだけではなく、(男女雇用機会均等法など)立法政策の展開の中で動的にその機能を観察し、また、同時に動員される種々の行政上の諸措置とともに評価することが必要となろう。【出典:荒木 尚志 2004「努力義務規定にはいかなる意義があるのか」労働政策研究・研修機構】

ロン・フラー(Ron Fuller)の法実証主義批判

フラーが着目した法実証主義の問題点とは、悪法が定立される事態に直面しても有効策を提供することができない、あるいは悪法の制定を許してしまう。フラーは「法の内面道徳(internal morality of law)」を主張した。社会的ルールとして法に道徳的要請があるとして,8つの基本的要請を列挙した。
法実証主義とは、国家が定める一定の立法手続を経て制定される法、および裁判所により現実に適用されている規範のみを法とみなし、これら実定法以外の規範を法的考察の対象から排除する立場をいう。 したがって法実証主義においては、単なる道徳規範や宗教規範は法と考えられず、またいわゆる自然法の存在も否定される。【出典:平見健太 2020「ロン・フラーの法理論 ―その基底にある人間観と社会構想―」】

悪法と法の支配

悪法も法なり。悪法は法にあらず。この議論は、「法の支配」の原理の下で法の適正さをいかにして達成するかの議論と、関係しうるものである。

社会倫理維持

法律とは、その制定によって社会の倫理を維持せねばならない。道徳律(道徳的な内容を処罰する法、要は不道徳を処罰する法)を制定する根拠は「社会倫理維持(モラリズムの立場)」と「法益保護(功利主義の立場)」から論じられてきた。

保護法益

法によって保護されている一定の利益のこと。ゲーム理論家にはインサイダー取引規制(金融商品取引法)がわかりやすい。インサイダー取引規制を遵守する単一の投資家がそのような意味合いで信頼されるには、投資家とはインサイダー取引規制を遵守するものだと信頼されなければならない(ベイジアンゲーム的状況)。インサイダー取引規制によって、投資家がインサイダー取引規制を遵守していると信頼されているとき、それはインサイダー取引規制の保護法益である。

禁じられた悪

道路交通法規違反など、法で禁止されて初めて不正行為になるもの。法定犯。殺人など、法以前の問題である不正行為を「それ自体の悪(自然犯)」とする。

ハイスピーディブーン

「法と道徳の関係」で知っておきたい知識をまとめました。勉強のキッカケになればいいなと思っています。詳しく書かれている本を探しながら、ノートを一冊つくる感覚で勉強すると良いですね。そうです、「法と道徳の関係」というタイトルのノートを一冊自分で作りましょう。いろんな大学で過去にも出題されている頻出のテーマなので、出たら勝てるくらい準備しないとね。

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