第7回 利益団体・圧力団体 ―利益代表―

1.利益集団・利益団体・圧力団体

民主政治の公式的制度は代表選挙である。一方、非公式的でありながら、現代民主政治において極めて大きな役割を担っているのが利益団体 の活発な圧力行動である。

  • 利益集団:共通の利益を持つ人々の集合。潜在的利益集団:共通の利益が存在するにもかかわらず、それが明確に意識されていない利益集団。
  • 利益団体:利益集団に属する一部または全部によって、共通の利益を実現するために組織化されたもの。
  • 圧力団体:利益団体が政党や行政などに影響力を行使するとき、その利益団体を圧力団体と呼ぶ。※圧力行動:利益団体が自己の利益や理念を公共政策に取り入れさせるために、政党や行政府に影響力を行使する活動。(ロビイング、ロビー活動)

2.圧力行動の対象

  • 立法ロビイング:国会議員や政党への働きかけ。最も古典的なタイプ。アメリカで顕著。※政党や議員への影響力:政治資金や選挙支援
  • 行政ロビイング:行政官僚に対する公式・非公式の圧力活動。日本で一般的。大きな許認可権限や補助金の裁量をもつ財務省などの経済官庁への働きかけが多い。
  • 草の根ロビイング:マスコミや宣伝を通じ、有権者に直接訴えることで政治に影響力を及ぼす。

3.利益団体の種類

  • 業界団体:同業者の経済的利益を追求する団体。共通の経済利益や職業に基づいて形成された集団。経済団体、労働組合、農業組合など、圧力団体といわれる場合の多くはこれ。
  • 価値推進団体:共通の社会的価値の実現を目標にした団体。環境団体、人権団体、消費者保護団体、最近では、国際的な活動を行うNGOなども。

 

4.圧力活動と公共政策をめぐるジレンマ

★疑問:圧力活動による個別利益の表出と、議会政治による公共の利益の形成は、どう調整されるのか?

  • 多数の圧力団体が自由に利益追求競争を展開すれば、社会の利害対立が激化するのではないか?
  • 議会制民主主義の形骸化、国会の軽視にならないか?(=利益集団民主主義という批判)
  •  

  • 巨大な利益集団が特権的な地位に着くのではないか?
1)楽観派: (政治的)多元主義 (ダール、コーンハウザー、ラスウェルら)

多元主義:社会は多種多様な集団(利益集団)から構成されており、公共政策はそれらの集団間での対立、競争、そして調整の中から生まれるという議論。
◎個別の利益が自由に表出されても、一定の条件さえあれば公共の利益は実現される。その条件とは?

  • 団体間の抑制と均衡:ひとつの団体の力が高まると、それに対抗する団体が組織され相互に抑制し合うことによって、利益が調整されるという考え方。「対抗権力」の概念。
  • 重複メンバーシップ:人々はしばしば利害の異なる複数の集団に所属(重複メンバーシップ)。それにより対立が緩和され、利益が調整される。
  • 潜在的利益集団の反発:特定の利益団体の活動があまりに露骨になると、潜在的利益集団が自らの共通利益に自覚的になり、反対の声を挙げることで、利益が調整される。
2)悲観派: 圧力団体の逆機能

5.ネオ・コーポラティズム

各利益集団が少数の巨大な利益集団(頂上団体)に集約され、その頂上団体が政治過程に独占的に利益を表出すると共に、実際に政策形成に参加して政府や他の頂上団体と協議・調整を行い、しかも、その政策の執行においても政府と協力する仕組み。
★一般に、政府、資本(経営者団体)、労働(労働組合)の三者(政労使)による合意形成。
★頂上団体は、各種の政府委員会(審議会、諮問委員会)に参加。 →審議会政治
各団体は、政策形成に加わる中で自己利益を部分的に実現し、対抗集団と妥協や調整を図る。
※オーストリア、スウェーデン、オランダなどで顕著。議院内閣制の国に多い。

  • 長所:各利益集団に協調行動を促し、社会全体の利害調整を図ることができる。
  • 短所:「もう一つの政府」という批判。議会と異なり、国民的判断から隔絶された妥協政治。政労使の三部門の代表者が事実上政策方針を決定し、政党政治はそれを追認するしかないという現状。◆現状:経済グローバル化に伴う自由競争・規制緩和路線の影響で、ネオ・コーポラティズムは下火に。

6.昨今の利益集団・圧力団体

過剰な官僚接待や違法な金品授受、「天下り」問題など、官僚と業界の恒常的な接触に大きな批判。
→官僚への接触に制限強化。官僚相手のロビー活動だけでは政策が実現せず→政治家への接近が増大。
例)経団連が要望した90年代後半以降の商法改正などは議員立法が多い。
★それでも、行政に対するロビー活動は、利益団体の圧力活動の中心。

7.フリーライダーと集合行為問題

利益集団の規模が大きくなると、共通の利益を守るための義務やコストを払わず、恩恵だけを享受しようとする「ただ乗り」=フリーライダーが増え、利益団体の組織化や運営維持が困難になることがある。これを集合行為問題という。

8.政治参加のパラドックス

圧力団体や住民運動に積極的に参加し自己利益を実現できるのは、時間や知識、費用などに余裕のある社会的強者であり、政治的な援助を要する社会的弱者ではないことから、積極的な社会参加が社会的平等をもたらすという期待とは逆の現実になっているという逆説。

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