過去問・摂南大学外国語学部、国際学部(3年次編入試験・2023年度)

次の文章(著作権の関係で割愛)を読み、「多様性が認められる社会にはどのような取り組みを行うことが重要か」ということについて、あなたの考えを600字以内で述べなさい。

解答の着想の例
出題の文章は、論者がアメリカの黒人の権利回復について述べたものだ。「アメリカは『人種のるつぼ』であるべき」と言う含意で、「いつか融合すべき」とあるが、「人種のサラダボウル」とは人々が個性を失うことなく混ざり合うことを肯定する意味でも使われる。論者が明確に「人種のるつぼ」のほうをゴールにしているのは、「社会の分断」という問題意識からくるものであって、どういう事かと言うと、「私は白人だ」または「私は黒人だ」と言う所属の考え方が依然として残っている様子が、ふとしたことで社会の分断を招くという特定の問題意識によるものだ。
黒人の権利回復を社会正義として掲げることは、闊達な議論を呼び覚ます。ここで犠牲者意識とは、①黒人は黒人差別の犠牲者だ、②白人は積極的差別是正措置(アファーマティブアクション)の犠牲者だ、などであるが、自らの加害者性を忘れてしまうことが多く、社会の分断を招くことがある。白人至上主義は残っているし、ヘイトクライムもまだあるのだ。
犠牲者意識ナショナリズムとは、③日本人は原子爆弾の犠牲者だ、④アメリカ人はイスラムテロ組織の犠牲者だ、などである。ここで今日ナショナリズムとイコールであると考えられるものは国民主義であるが、犠牲者意識ナショナリズムとは、必ずしも以下のⅣの意味で機能しない。

Ⅰ.一つの民族が複数の国家に分かれているとき統一国家を求める民族統一主義
Ⅱ.一つの国家に複数の民族がいるときに自民族のもと国家形成を求める民族主義
Ⅲ.国家形成を最上のものと考え、国家の命令に従うことを人民に求める国家主義
Ⅳ.国家形成を最上のものと考え、それを実現することによって民族の解放(自立)を目指す国民主義

だから少なくとも将来において、差別や迫害の犠牲者としての黒人像を脱却する必要があるだろう。

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