法学の対策

罪刑法定主義

①慣習刑法の排除

慣習法を法源とすることは認められない

法源

法の根源(おおもと)もしくは淵源(みなもと)または存在形式(けいしき)もしくは存在根拠(こんきょ)をいう。

  • 憲法:一般に「憲法」とは,国家の存在を基礎づける基本法である。基本法 (きほんほう)とは、国の制度・政策に関する理念、基本方針が示されているとともに、その方針に沿った措置を講ずべきことを定めている法律である。
  • 法律
  • 行政機関の定める命令
    • 政令:日本国憲法第73条第6号に基づいて内閣が制定する命令。行政機関の定める命令の中では最も優先的な効力を有する。
    • 省令
    • 規則:内閣府及び各省の長以外の他の行政機関が発する命令をいう。
    • 執行命令(実施命令)
    • 委任命令:行政機関の定める、法律の委任を受けた法規(行政立法)
    • 独立命令
    • 緊急命令
  • 条例:条例は、地方自治法に基づいて地方議会により制定され、国の法令に違反しない範囲で定めることができる。
  • 判例
  • 慣習法:国家の正統的権力に直接に支持されている国家法ないし実定法に対し,社会に慣行的に行われている法。
  • 条理:事物の道理・筋道のこと。裁判で、成文法や慣習法の欠陥を補充するために援用されることが多い。社会通念、公序良俗および信義誠実の原則なども条理を表現している。
法律の委任

憲法や法律が、自ら規定すべき事項を他の法形式で制定できるとすること。 政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない(憲法第73条6項)。
法律の授権と似ているので注意が必要である。適用される条文が変わらないのが「法律の授権」であり、適用される条文から変わるのが「法律の委任」である。たとえば法律の条文内に「別途、規則で定める」とは、適用される条文は変わらず、本当に何かが別途、規則で定められている状態を言う。法律の委任は、適用される条文からして法律の委任を受けた状態を言う。

法律の授権

「法律の授権」とは、例えば、法律の条文内に「別途、規則で定める」と書かれている場合に限って、規則で定めることができるということです。

制定法

議会その他公の立法機関が一定の目的と手続のもとに定立する法。憲法、法律のほか、行政機関の定める命令、最高裁判所規則、地方公共団体の条例などもこれに含まれる。

成文法

権限を有する機関によって文字によって表記される形で制定されている法

実定法

人為により定立された法 又は特定の社会内で実効的に行われている法

法令

法令とは、制定法と行政機関の定める命令とされるも、それは日本語としての(または法学用語のくくりのなかでも)使われ方の意味合いがまちまちであることにより、実際に条例を法令と呼ぶ場面も文献で見受けられることがありますが、制定法を「国会で制定する法規範」に狭く置き換えて狭い意味にする場合があるものの、またしても今度は広く置き換えて「議会で制定する法規範」としたとき制定法と再び広い意味にする場合もあるものですから。

国家法とは
↓国家法とはこちら
国際法(国際社会を規律する法) 日本国内を規律する法
地方自治体など国家以外の団体に対する法 国家全体に適用される法
慣習法 国家権力による強制力をもった法

国家法とは、日本国内を規律する法で、かつ国家全体に適用される法のうち、国家権力による強制力をもった法である。

罰則

ある法令のなかで、違反行為に対する刑罰または過料を科する旨を定めている規定

刑罰

刑法第9条が「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑(独立して科すことができる)とし、没収を付加刑とする。 」としている。

強制力

法律に違反した場合は、刑罰を課されたり、裁判手続きにより強制的に支払いなどがされるという意味。交番の窓ガラスを割ると、器物損壊で懲役または罰金、もしも原裁判取消などで釈放されたとしてもガラス代の支払いは請求される場合があります。

適用される

たとえば刑事責任を問われる年齢は14歳以上である、しかし刑法41条(責任年齢)も刑法の条文である、だから刑法は全年齢に適用される法である。また、たとえば「廃棄物処理法違反で刑罰が適用される」という言い方もする。

準用される

法律の条文の中で定義されている準用の規定に従い、法律が準用されるということ。類推適用ではない。

援用する

法律用語で「援用する」とは、ある事実を自己の利益のために主張すること。時効、証拠や抗弁などが「援用される」である。それに対して法律の条文は「適用される」または「準用される」である。

  • 時効(じこう)とは、ある出来事から一定の期間が経過したことを主な法律要件として、現在の事実状態が法律上の根拠を有するものか否かを問わず、その事実状態に適合する権利または法律関係が存在すると扱う制度、あるいはそのように権利または法律関係が変動したと扱う制度をいう。
  • 抗弁(抗辯、こうべん)とは、民事訴訟において、被告(反訴の場合は反訴被告たる原告。以下同様。)が原告(反訴の場合は反訴原告たる被告。以下同様。)の申立て(請求)を排斥するために、その基礎となる事実(請求原因事実)と両立しつつその法律効果を排斥する別個の事実をいう。
  • 証拠(しょうこ、英語: Evidence)とは、ある命題の真偽や存否を判断する根拠となるものをいう。法律用語としての証拠は、証拠方法、証拠資料、証拠原因という3つの異なった意味を含んでいる。
  • 挙証責任とは、訴訟上、証拠によって事実の存否が確認できない場合、裁判所はその事実は存在しないと仮定するが、それによって当事者の一方が受ける不利益をいう。刑事訴訟では検察官、民事訴訟では原告が原則として挙証責任を負う。立証責任。
  • 違法性阻却事由(いほうせいそきゃくじゆう)とは、通常は法律上違法とされる行為について、その違法性を否定する事由をいう。日本では、民法上のものと刑法上のものがある。違法かもしれないけどナニナニっていう真っ当な理由があったでしょうという話。原告の訴えについて、違法性阻却事由が存在すれば裁判所はその請求を退ける場合がある。刑事裁判で、違法性阻却事由の不存在は検察側に挙証責任があると考えられている。
  • 自己の利益とは、たとえば障害者が、自己の利益のみならず社会を豊かにするためにも、自己の創造的、芸術的及び知的な潜在能力を開発することを可能にしなければならない、など。社会的地位、経済的地位、労働条件の維持改善や、自己の法律上の利益、児童の最善の利益などさまざま。
  • 法律効果(ほうりつこうか)とは、具体的な事実が法律要件を充足することによって生じる、法規範が定める法的な効果である。刑法であれば構成要件を充足することによって適用されるとき、被疑者の人権を侵害する方向で作用することになるから、明確性の原則がある。

②遡及処罰の禁止

その法律ができる前にさかのぼって適用されることはない

③類推解釈の禁止

事件について直接に適用できる規定がない場合に,類似した事実に適用される刑罰法規を適用し処罰すること(≒類推適用も禁止されるものと考えられている)

類推適用

権利が発生する事実があるけれども、法律の条文が適用されるすべての要件を満たさないという場合にも、法律の条文が適用されるだろうという価値判断をはたらかせること。

価値判断をはたらかせる

たとえば窃盗の被疑者が、「不法領得の意思」がなかったと主張していたとしても、窃盗の結果起きてしまったことが「不法領得の意思」があった場合と同じように評価できるならば、そこは広く捉えてしまおうと価値判断をはたらかせることができる。しかし、罪刑法定主義のもと被告人に不利益ある類推適用は禁止されるものと考えられている。

④絶対的不定期刑の禁止

刑期を全く定めない判決を出してはならない

⑤明確性の原則

人権を侵害する方向で作用する法律は、それによって萎縮効果を生じないよう、また誤って不利益を受ける者の生じないように、明確に規定されなくてはならないとする原則

萎縮効果

刑罰や規制を定める法令の文言が不明確であったり過度に広範であるため、その法令に抵触することを恐れて、本来自由に行いうる表現や行為が差し控えられること。

抵触する

もはや日本語として単に「違反している」という意味でも使われるし、「ある法が適用される状態や、ある法で認められる状態で、別の法が適用されるかもしれなくなること」という意味でも使われるし、たとえば「憲法で認められた表現の自由と他の社会的利益との抵触」という用例があって、たぶん憲法で保障されている自由権が制約されることを考えるときにここぞとばかりに「抵触」という日本語が使えるとカッコいいかもしれない。

制約される

公共の福祉とは、日本国憲法第12条・第13条・第22条・第29条に規定された人権の制約原理である。民法1条1項は「私権は、公共の福祉に適合しなければならない」とし、私権の内容および行使については、公共の福祉(社会共同生活全体の利益)との調和を保つことが求められています。

⑥過度の広汎性の理論

処分の根拠条文が過度に広範であるために、その条文全部が違憲無効となること

過度に広範

過度に広範な法律は、違憲無効な法律である可能性があります(c.f. 違憲立法審査権)。違憲無効な法律は誰に対しても適用されることはありえません。 たとえば「ネトゲ廃人を取り締まる法」を制定できたとしても、集会の自由や結社の自由に抵触するわけですから、構成要件が何人も適用されるかのようにネトゲ廃人とだけ規定されているわけですから違憲ということになりかねません(c.f.広島市暴走族追放条例事件)。

違憲立法審査権

憲法学においては,「違憲判決の効力」という論点がある。すなわち、最高裁判所により法律が憲法に違反するとした違憲判決が出された場合、その判決の効力は、法律を一般的に無効とするのか(一般的効力説)、それとも法律は当然には無効にはならないのか(個別的効力説)という問題である。わが国の憲法学の通説は、最高裁判所により違憲判決が下された場合であっても、その判決はその裁判の当事者間にのみ効力が生じ、違憲とされた法律は当然に無効とされるものではないという個別的効力説を採用している。

違憲判決

日本では特に、最高裁判所による判決をいう。ただし、下級裁判所も違憲審査権を行使することはできる。しかし、下級裁判所の違憲判決については必ず最高裁判所への上訴が認められる(民事訴訟法第312条・第327条・第336条、刑事訴訟法第405条第1号・第433条など)ため、確定判決としての違憲判決は原則として最高裁判所が下すこととなる。仮に特定の案件に関して最高裁判所への上訴がなされずに確定したとしても、その憲法的論点については、その後、他の案件にて最高裁判所が審理した際に異なった判断がなされる可能性があることから(これはいわゆる判例変更にはあたらない)、終審裁判所としての最高裁判決が特に重みがある。
要するに、最高裁判所ではない下級裁判所が違憲判決を出したとしても、最高裁判所の下した違憲判決に特段の効力があるということ。

法治主義

法律による行政の原理(法治主義)は、行政活動が法律に基づき、法律に従って行われなくてはならないことを意味する。

  • 人の本性を悪と考え、徳治主義を排斥して、法律の強制による人民統治の重要性を強調する立場。韓非子がその代表者。ホッブスも同様。
  • 王の統治権の絶対性を否定し、法に準拠する政治を主張する近代国家の政治原理。→法の支配
法の支配

法の支配(ほうのしはい、英語: rule of law)は、専断的な国家権力の支配を排し、権力を法で拘束するという英米法系の基本的原理である。法治主義とは異なる概念である。 「法の支配」とは、統治される物だけでなく統治する側もまた、より高次の法によって拘束されなければならないという考え方である。

法律の法規創造力

国民の権利義務に関するルールは法律のみ定めることができ、行政機関は、法律の授権なく法規を作れない。

法律の優位

行政活動は法律に違反してはならず、違反したら、取消されたり、無効となる。

法律の留保

一定の行政の活動が行われるためには、法律の根拠・授権が必要。

優先的な効力

上位法令の優先

憲法のある規定と法律のある規定が矛盾・抵触する場合、憲法の規定が優先され、当該法律の規定は原則として無効となる。

一般法と特別法

同一の順位の法令であっても、一般法(広い範囲に適用される法令)と特別法(そのうちのある特定の範囲にのみ適用される法令)の関係がしばしば見られる。ある事象に対して特別法が存在する場合には、一般法よりも特別法が優先される。

前法と後法

同一の順位で、かつ、一般法と特別法の関係でない形で、前法(従前からある法令)と後法(新しく制定された法令)がある場合は、後法が優先される。したがって、法令の内容を改正する場合には、同一順位の法令を制定することによって行われる。特殊な例としては、条約と法律を同順位とする国においては、条約の国内法的効力が、その後に制定された法律によって覆されることがある。後法上位の原則。

独学の仕方

知識を理解する

知識を確実に「理解」すること。その事項(専門用語や判例)を知っているということは「知識」であり、「理解」とは知識を用いて議論してたり、そのうえで自分の見解を持つことができることを意味します。そのためには「知識」に関する多くの文献を読み様々な視点を身につけることが大切です。必ずしも高度な論文でなく、読みやすい本を(たとえば有斐閣アルマシリーズでもよいので)読んでいきましょう。

私は正しい、みんなも正しい。

論理的な文章を書く

彼は腕力が強く、二番目に腕力が強い。
(知識が書かれている)

彼は腕力が強い、だから彼は二番目に腕力が強い。
(論理が書かれている)

彼は腕力が強い、しかし彼より腕力の強い生徒が一人だけいる、だから彼は二番目に腕力が強い。
(論理が論理的に書かれている)

文と文をつなぐ接続語は様々なものがあります。そのうち「だから」や「ならば」を接続語で用いると、論理的な文章を書いたとみなされます。「だから」の前と後が「同値」であるほど高得点になります。

「彼は腕力が強い」(何番目に強いかわからないから二番目に強いとは限らない)≠「彼は二番目に腕力が強い」

「彼は腕力が強い、しかし彼より腕力の強い生徒が一人だけいる」(二番目に強いとわかる)=「彼は二番目に腕力が強い」

読んでもらう

独学で編入対策が難しい理由は、「アウトプット」の訓練が難しいからです。知識をインプットすることは、極論を言えば独りでできます。しかしアウトプットは違います。知識を「理解」していることを読み手にくみとってもらう文章で、専門科目や小論文科目の答案を作成しなければなりません。ここで、答案作成練習がどうしても必要になります。しかし、ただ単に解答例を作成するだけで十分なのでしょうか?

読んでもらいましょう。

文章表現が適切かどうか、知識が正確かどうかや、自説が妥当かどうかなどについて、自分で自分を評価することは大変難しいと思ってください。だからこそ、そこにはどうしても「他人の目」が必要になります。残念ながら、アウトプットの練習に関しては「他人の目」を調達するしかありません(その時点で「独学ではない」ということでしたら謝ります)。

問題演習がしたい人向けリンク集

日本大学法科大学院の過去問題と採点基準
採点基準まで載っているので、自分が受けたい大学(法学部)の過去問題に採点基準が載ってなかった受験生は大いに参考になるはずです。

法学の良書

『法学入門 第6版補訂版』末川 博 (編集)

この本を一冊持っておくと良いです。初めて法学を勉強する際にこの本を教科書にして通読する人もいれば、辞書代わり(著名な先生方は〇〇について何とおっしゃてるのかな?と調べる際)に使う人もいて様々だと思います。全く別の書籍で法学の勉強を始めて、複数冊の本を読み比べた後で、「あぁなんだこの本に大体書いてるじゃないか」という人もいますね。どこの法学部を受験するとしても編入学試験の勉強としては大変おススメな一冊となります。こんな難しい本で勉強していられない人は、読みやすい本を探したり、資格試験本に手を出したりして試行錯誤して、何か考えが煮詰まったり、覚えたことが多くなって強い気持ちになれたタイミングでこの本を、やっぱり、読んでみると「あれ、読める」ということもあると思います。以前に京都大学法学部に編入学した合格者の方は「この本を穴が開くまで読めば受かる」と言っていた気がします。名古屋大学法学部に編入学した合格者の方も「この本は何周したか覚えていません」ということでした。

『法解釈入門〔第2版〕: 「法的」に考えるための第一歩』山下 純司 (著), 島田 聡一郎 (著), 宍戸 常寿 (著)

この記事の「罪刑法定主義」のチャプターを読んで、すごく飛び飛びだけど大丈夫かな、とか、感覚的な所で何か腑に落ちない感じがする人はこの本を読むと大体スッキリします。大体全部載っています。器用な人は、上述の説明で答案を書けるんですが、それがすごく不気味だという人がシッカリ一から勉強するのに向いている本です。この本の内容を理解できる人、答案に正しく書ける人は編入学試験の受験生としてはかなり上級者になってくると思います。合否を分かつ可能性があるなと思いましたね。第一部だけでも読んでみてください。

『元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術 [改訂第4版]』吉田利宏 (著)

全然そんな難しいわけではない大学の法学部に編入したい人はこの本が一番向いているかもしれません。頭の良い中学生が「弁護士になりたいです。」と言い出したら、まずこの本でないかと思われます。中学公民から接続可能とお見受けしましたね。

『高校から大学への法学[第2版]』君塚正臣(著)

高校の勉強が充実してキチンと出来ている人であれば、おススメの一冊。国を創るために法律が必要だった時代から、現代の私的自治までの道のりを世界史を振り返りながら丁寧に解説しています。しかし出てくる世界史は必要最低限の知識量なので、高校時代や受験生の頃に公民科のほうをちゃんとやった自信があれば読めるはずです。著書のなかで明確に「高校から大学への橋渡しを目的としている」と銘打ってあるので、確かに読みやすいです。法学をソクラテスから紐解くことは教える者であれば一度はやってみたい試みですが、それを丁寧にやってのけた本が一冊になっていたのでご紹介しています。

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