Edward Hallett Carrの指摘

『国際政治学をつかむ』著)村田晃嗣、君塚直隆、石川卓、栗栖薫子、秋山信将 有斐閣より拝借
(引用:一部改訂)
リアリズムの伝統は、古代ギリシャのトゥキディデスや中世イタリアのマキャアヴェリに始まるといわれるが、国際政治理論の支配的潮流として確立される景気となったのは第二次世界大戦であった。第一次世界大戦後の1920年代には、国際連盟や不戦条約に象徴されるように、戦争を違法化することで平和を実現できるという法律主義的、理想主義的な考え方(古典的リベラリズム)が支配的であった。(中略)英国の外交官・歴史家・国際政治学者カー Edward Hallett Carr は、第二次大戦の勃発直前に刊行された『危機の20年』で、違法化された侵略戦争に対し集団で制裁を科すという「集団的安全保障」のしくみを条約で作るだけでは、国家がその条約に従って行動するとはかぎらないとし、そのような願望的思考に基づく外交の危険性を指摘した。
(おわり)

 

『国際関係理論史』著)浦野起央 勁草書房より拝借
(引用)
カーは『危機の20年』(1939年)のなかで、いみじくもこう指摘している。「健全な政治理論は、理想と現実の両方の要素に立脚していなければならない、理想主義が権力者の利益を隠蔽するだけの耐えがたいペテンに陥ると、現実主義者は、その側面を剥ぐうえで欠くことのできない役割を果たすことになる。しかし、純粋の現実主義は、どのような国際社会にあっても不可能にしかねないむきだしの権力闘争しかもたらさない。」
(おわり)

 

カーの指摘を支援する資料として、その当時イタリア首相だったムッソリーニの風刺画「国際連盟(LEAGUE)は何もできない」は端的だと思われる。風刺画の右側の人物は「アビシニア」とかかれた紙を持っている。アビシニアとはイタリアが植民地支配を試みたエチオピア帝国のことである。つまりイタリアが、自軍のエチオピア侵略を国際連盟は食い止められないだろうと高を括っている様子である。当時イタリアを抑止しようとした英仏も、他ならぬイタリアから英仏の権益は侵害しないと通達され、これを容認している。

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