第6回 選挙制度と投票行動 ―国民代表―

1.(民主的)選挙の基本原則

  • 普通選挙(⇔制限選挙)
  • 平等選挙(⇔不平等選挙)
  • 直接選挙(⇔間接選挙)
  • 秘密選挙(⇔公開選挙)
  • 自由選挙:政治活動の自由、集会・結社の自由など、参政権(政治的権利)が十分保障された選挙。

2.選挙の機能

  • 1)代表者選択機能:国民の政治的な代表者たる議会議員を選出する機能。
  • 2)政策選択機能:各党や立候補者が掲げる政策や政権公約(マニフェスト)を選択する機能。
  • 3)政策評価機能:各党の過去の政治活動について評価、査定する機能。
  • 4)正統化機能(正統性付与機能):選挙という主権者の審判を経ることにより、政治権力に正統性を与える機能。
  • その他、利益表出機能や利益集約機能もある。

3.選挙制度の概要と比較

選挙制度は、

  • 選挙区制
  • 投票方式
  • 代表制

という3つの側面から分類可能。

1)選挙区制による分類
  • 小選挙区制度:選挙区の議員定数は1人。
  • 大選挙区制度:1選挙区の議員定数が2人以上。 ※かつての中選挙区制度(1選挙区に2~6定数)も該当。
2)代表制による分類
  • 多数代表制:選挙区の多数派が議席を獲得する制度。小選挙区制はその典型。
  • 少数代表制:最多得票でなくても議席を獲得できる制度。大選挙区制はその典型。
  • 比例代表制:各党の得票率に応じて議席を配分する制度。少数代表制の一種とも言える。
■比例代表における名簿式:
  • 拘束名簿式:各党が予め提示した候補者名簿の当選順位により議席を配分。党名で投票。(衆)
  • 非拘束名簿式:各党は当選順位を決めない候補者名簿を示す。党名か候補者名で投票。(参)
■ドント方式:

各党得票数を整数で割った商の大きい順から議席を配分。(衆)(参)両方。

3)投票方式による分類
  • 単記投票制:投票用紙に一名の候補者名を記す
  • 連記投票制:
    • 完全連記式:選挙区の定数と同数の候補者名を連記
    • 制限連記式:選挙区の定数よりも少ない2名以上候補者名を連記

4.有権者の投票行動

  • 政党投票:支持する政党やその候補者に投票するという党派単位での投票。
  • 候補者投票:候補者個人の政治姿勢やキャラクターに共感して行う投票。
  • 争点投票:中心的な政治課題に対する各党の政策スタンスに基づいて行う投票。
  • 業績投票:各党(特に政権担当政党)の過去の業績についてその善し悪しを基準に行う投票。
  • ※白票:候補者や支持政党の名前を書かずに投票することで、政治への批判や抵抗の意を示す行為。
    ※棄権:投票しないことによって選挙権を棄権することで、政治への批判や抵抗の意を示す行為。

★関連キーワード★

  • 死票:投票した候補者が当選できず、議席獲得につながらなかった票。次点以下に投じられた、議席につながらない票。
  • ゲリマンダリング:選挙区制における恣意的な選挙区割り。与党の党略的な選挙区割り。
  • 一票の格差:各選挙区の有権者数と議員定数の比率の著しい不均衡(議員定数の不均衡)のゆえに、有権者の投じる一票の価値に差が出ること。

6.現代選挙の特質と問題点

1)選挙制度改革:
  • 政治腐敗や選挙腐敗への批判:選挙や政治活動に多額の金銭を要し、政治腐敗、金権政治の温床に。当時の有名な汚職事件:リクルート事件(1989年)、佐川急便事件(1991~92年)
  • 政権交代のある健全な議会制民主主義の実現を目指す → 国対政治の克服◆細川護煕政権(日本新党らによる非自民連立政権)による「政治改革」
    改正公職選挙法、改正政治資金規正法、政党助成法 などの成立(1994年)
    → 政党や政治家の政治活動、選挙活動の公明性、は健全な民主主義にとって不可欠。

    • 改正公職選挙法:小選挙区比例代表並立制導入、企業団体献金の制限、連座制の強化。※連座制:選挙運動の中心的人物が選挙違反をした場合、候補者の当選を無効にする制度
    • 改正政治資金規正法:企業団体からの政治献金を大幅規制。議員個人への企業団体献金×
    • 政党助成法:企業団体献金の制限の代わりに、政党活動の一部を国費(政党交付金)で助成
2)マニフェスト選挙

2003年の公職選挙法改正で、選挙期間中のマニフェスト(政権公約)の交付が可能に。
→ 2003年衆院選で民主党が初めてマニフェスト作成。以後各党が追随、今日、自治体選挙でも一般化。

3)イメージ選挙、メディア選挙
  • イメージ選挙:具体的な政策をあまり重視せず、党首や候補者のイメージやスローガンのような抽象的メッセージで有権者の支持を獲得する選挙手法。→マニフェストでも、政策の実現性より迎合的で総花的なメニューの羅列に。
  • メディア選挙:有権者の支持を獲得する上で、マス・メディアを最大限に活用する選挙手法。現在、各党は、メディア戦略の部門を置き、広告代理店などの助力を得て、選挙を戦っている。

★政治のポピュリズム(大衆迎合主義)化が指摘される今日、ポピュリズム選挙の傾向も著しい。

4)無党派層と浮動票
  • 政党支持率の低下と無党派層の拡大:特定の支持政党をもつ有権者(政党支持層)減少。無党派層が拡大。
  • ★無党派層に特徴的な投票行動:
    • 直前まで投票先を決めず、選挙ごとに投票先が変わる。→ 浮動票
    • 短期的で、私的利益に直結する政策争点を重視する傾向がある。
    • メディア報道の動向に影響を受けやすい。
    • よって政党側も短期的な「人気取り」に走りやすくなる。→ ポピュリズム(大衆迎合主義)の横行。

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