過去問・京都大学法学部(3年次編入試験・2016年度)

出題文

第一問

「法教育」とは、「法律家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎となっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育である」といわれている。このような「法教育」を小学校、中学校及び高等学校の児童及び生徒を対象に実施することについて、その意義と課題を具体的に論じなさい

解答の着想

重要なキーワード

■法や司法制度の基礎となっている価値

  • 自由と基本的人権の尊重
  • 法の支配
  • 正義の実現
  • 強制権力の行使と規制

■法的なものの考え方を身に付けるための教育

  • 事実と意見を区別するスキル
  • 争点を理解するスキル
  • 根拠を検討するスキル
  • 自分の意見を説得するスキル

法教育の意義

まず、法教育の意義について考えます。法教育を行うことで、次のような点が期待されます。

①社会参加の促進と市民意識の醸成

法律や司法制度を理解することで、個々の権利や義務を認識し、積極的に社会に参加する意識が醸成されます。これにより、良識ある市民としての行動が促進されます。

  • 「法の支配」は、社会の秩序を維持し、市民の参加を促進する役割を果たしています。児童や生徒が法の支配について学ぶことで、法を尊重し、法の下での公正な社会に貢献する意識を醸成することができます。
  • 「事実と意見を区別するスキル」を持つことで、児童や生徒は社会的な問題に対して客観的に考え、意見を持つことができます。これにより、社会参加意識が高まり、積極的な市民としての役割を果たすことが期待されます。
  • 「争点を理解すること」は、社会参加と市民意識の醸成にもつながります。児童や生徒が社会的な問題や課題について理解し、主体的に考え、行動することで、積極的な市民としての役割を果たすことができます。
  • 「根拠を検討するスキル」は、社会参加と市民意識の醸成にも貢献します。児童や生徒が情報や主張の根拠を検討し、社会的な問題について客観的に考えることで、積極的な市民としての役割を果たすことができます。
  • 「自分の意見を説得するスキル」を持つことは、社会参加と市民意識の促進にもつながります。児童や生徒が自分の意見を主張し、それを通じて社会的な問題に関心を持つことで、積極的な市民としての役割を果たすことができます。
②個人の尊重と共生の理解
  • 「自由と基本的人権の尊重」に関する授業を通じて、児童や生徒は他者の尊厳を尊重し、相互理解と共生の意識を醸成することができます。これにより、差別や偏見を減らし、より包括的な社会を築くことができます。
  • 「正義」の概念は偏見や差別と対立します。児童や生徒が正義の重要性を学ぶことで、差別や偏見を克服し、より包括的で公正な社会を築くための努力を行うことができます。
③民主主義の基盤構築
  • 「自由と基本的人権の尊重」は民主主義の基盤であり、市民が政治的な自由や権利を享受するための重要な要素です。児童や生徒にこれらの概念を教えることで、民主主義の理解と参加意識を醸成することができます。
  • 「法の支配」は民主主義の原則の一つであり、市民が法に従って政治的な参加を行うことを保証しています。児童や生徒が法の支配について学ぶことで、民主主義の理解と実践が促進され、健全な社会の形成に寄与することができます。
  • 「強制権力の行使と規制」に関する授業を通じて、児童や生徒は民主主義と法の役割や原則を理解することができます。これにより、法の下での社会的な秩序や公正な行動の重要性を認識し、民主主義の実践に向けた意識が醸成されます。
④個人の権利と責任の認識

「法の支配」の下では、個人の権利と責任が明確に定められています。児童や生徒が法の支配について学ぶことで、自身の権利を理解し、他者との関係で責任を果たすことの重要性を認識することができます。

⑤法の遵守と社会秩序の維持

法の重要性や役割を理解することで、社会秩序の尊重や法の遵守が促進されます。これにより、社会全体の安定と平和が保たれます。

法教育の課題

一方で、法教育を実施する際にはいくつかの課題も考慮する必要があります。

①教育内容の適切性

児童や生徒の発達段階や理解力に合わせた教育内容の設計が求められます。抽象的な法的概念を分かりやすく伝える方法や教材の開発が必要です。

②教師の専門性と研修

法教育を担当する教師や教育者は、法に関する専門知識を持ち、適切な教育方法を実践できる能力が求められます。そのため、教師の専門性向上のための研修や資格取得の制度が整備される必要があります。

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