経済史:伝統的経済史学

ドイツ歴史学派(German Historical School)

ドイツ歴史学派(German Historical School)は19世紀に発展した経済学の一派であり、その特長は以下のように要約されます。

  • 歴史的アプローチ:ドイツ歴史学派は経済学を歴史的な現象として捉え、経済現象を時代や文化の特定の文脈に結び付けようとしました。彼らは歴史的な実証研究を重視し、経済の発展や変化を理解するために歴史的なデータや文献を活用しました。
  • 方法論の重視:ドイツ歴史学派は、古典派経済学の抽象的な理論よりも、実際の経済現象を解明するための具体的な方法論を重視しました。彼らは歴史的な事実や経験的な研究に基づく分析を行い、経済学を理論的な抽象だけでなく、実用的な学問として捉えました。
  • 重商主義的な傾向:ドイツ歴史学派の一部の学者は、重商主義的な考え方に傾倒し、国家の経済的発展と国家の利益を重視しました。彼らは自由放任主義や市場競争を否定し、国家が経済に積極的に介入する必要性を主張しました。
  • 社会的・倫理的視点:ドイツ歴史学派は経済現象を単なる数値や利益の追求だけでなく、社会的・倫理的な文脈においても解釈しました。彼らは経済活動が社会や文化に与える影響を重視し、経済学を社会科学の一部として位置付けました。

これらの特長により、ドイツ歴史学派は19世紀の経済学において重要な影響を持ち、後の経済学の発展にも大きな影響を与えました。

リストの保護貿易主義

19世紀前半のドイツは、イギリスに遅ればせながら産業革命期を迎えていました。ドイツの経済学者であるフリードリッヒ・リストは「イギリスが主張する自由貿易論は先進国のエゴイズムであり、ドイツのような後進国は不利益を被るだけだ」と主張しました。

  • リストの主張は、イギリスが主導した自由貿易理論は、イギリスが既に工業化が進んでいたような先進国にとって有利であるが、ドイツなどの後進国には不利益をもたらすというものでした。リストは、自由貿易が後進国の産業発展を阻害し、国内産業を破壊する可能性があると主張しました。先進国の工業製品が廉価で性能もよければ、自由貿易によって後進国の工業製品が駆逐されてしまうというわけですね。
  • リストは、後進国が保護主義政策を採用し、国内産業の育成を図ることが重要だと考えました。彼は、関税や輸入制限などの保護政策を通じて、国内産業を保護し、発展させる必要があると主張しました。これにより、後に「リスト制度」として知られる経済政策がいくつかの国で採用されました。

史的唯物論(Historical Materialism)

史的唯物論(Historical Materialism)は、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによって発展された思想の中核的な概念です。これは、社会と歴史の発展を経済的な条件に基づいて説明しようとする理論的枠組みです。

史的唯物論は、次の主要な要素を含んでいます。

  • 経済基盤(Base)と上部構造(Superstructure):史的唯物論では、社会は経済基盤と上部構造の二つの部分に分かれるとされます。経済基盤は生産手段や生産関係などの経済的要素を指し、上部構造は法律、政治体制、文化、宗教などの社会的・精神的な要素を指します。経済基盤が社会の発展の主要な動力であり、上部構造はそれに支配されるとされます。
  • 生産関係の変化:史的唯物論では、生産手段や生産関係の変化が歴史の進展を促す主要な要因であるとされます。経済基盤が変化すると、それに応じて上部構造も変化していくとされます。
  • 階級闘争:史的唯物論では、生産関係の変化はしばしば階級闘争によって引き起こされるとされます。階級闘争は支配階級と被支配階級との間で行われ、新しい生産関係や社会秩序の確立につながるとされます。
  • 社会変革と歴史の進展:史的唯物論では、社会変革が歴史の進展の主要な動力であるとされます。新しい経済基盤の形成や階級闘争による変化は、社会の発展と進歩をもたらすとされます。

史的唯物論は、マルクス主義の中核的な概念であり、経済的な条件が社会的・政治的な構造や文化的な現象を形成するという視点を提供します。

ヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Schumpeter)

ヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Schumpeter)は、20世紀初頭のオーストリア生まれの経済学者であり、経済成長理論やイノベーションの役割に関する著名な研究で知られています。彼の中でも特に有名な概念には、「企業家」と「新結合」があります。

  • 企業家(Entrepreneurship):
    シュンペーターによれば、経済発展の主要な推進力は「企業家」であり、彼らは革新的なアイデアやビジネスモデルを通じて経済に変化をもたらすとされます。彼が指摘するのは、企業家が単に既存の市場で競争するだけでなく、新しい製品やサービスを開発し、新しい市場を作り出すことで、経済成長を促進する役割を果たすことです。このような企業家精神が、経済におけるイノベーションや進歩の主要な源泉であるとされます。
  • 新結合(New Combination):
    シュンペーターは、経済発展の過程で起こる変化を「新結合」と呼びました。これは、既存の生産要素(資本、労働、技術)を新しい方法で組み合わせ、新しい製品や生産プロセスを生み出すプロセスを指します。新結合は、企業家の行動によって引き起こされ、経済の構造や動学的な変化をもたらす要因とされます。企業家がイノベーションを通じて新たな市場を開拓し、既存の経済構造を変革することで、新結合が生じるとされます。

これらの概念は、経済学におけるシュンペーターの貢献の中心的な部分を形成し、経済成長とイノベーションの理解に重要な洞察を提供しています。

参考文献

『一般経済史 (MINERVAスタートアップ経済学)』 河崎信樹 (編集), 奥 和義 (編集)

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