過去問・関西大学社会学部心理学専攻(3年次編入試験・2022年度)

問1.パイロットの訓練をしていた教官が、自分は、良いフライトの後は褒め、悪いフライトの後は叱るようにしているが、叱ると次のフライトは良くなるが、褒めると次のフライトは悪くなることを経験してきた。従って、叱ることは効果があるが、褒めることは逆効果だと結論しました。教官が自分の経験を正しく述べているとして、教官とは別の解釈は可能でしょうか。教官とは別の解釈を述べてください。

解答の着想
0.
出題文の不備を指摘したり、指摘しているかのような文面にならないように書く必要があるため、そこだけ気をつける。

1.

良いフライト 悪いフライト
褒める 悪い効果
叱る 良い効果

「叱ることは効果があるが、褒めることは逆効果だ」と一概に結論するのであれば、まだ検証していない事項があって、良いフライトで𠮟ったときの効果と、悪いフライトで褒めたときの効果が未検証である。

前回良いフライト 前回悪いフライト
今回良いフライト ?回 ?回
今回悪いフライト ?回 ?回

そもそも教官が何もしなかった場合に、どういう結果になるのか、わからないなかで、「良い効果があった」という教官の述懐を、たとえば「悪いフライトをした訓練生が放っておいても次回良いフライトをする確率」を上回って改善されたのかと決めつけてよいのだろうか。

2.
上記と関連して、「良いと褒める」、「悪いと叱られる」という教官の手法が、どこまで条件付けされたものか不明である。たとえば100回フィードバックした後で、フィードバックの効果について述懐しているとしても、それが極端な話で、100人の訓練生が1回フィードバックされて前後を比較したものなのか、1人の訓練生が100回フィードバックされて前後を比較したものなのか、書かれていない。いずれにせよ、学習という話にも発展してくるはずだ。

3.
「教官に褒めてもらえる」と動機付けられた訓練生と、動機付けられていない訓練生とを、おしなべている。また、「教官に叱られてしまう」と動機付けられた訓練生かどうかも、統計で差別されていない。教官に褒められるとしても良いフライトをしようと思わない訓練生や、教官に叱られるとしても良いフライトをしようと思わない訓練生や、教官に褒められないとしても良いフライトをしようと思う訓練生や、教官に叱られないとしても良いフライトをしようと思う訓練生など、現実には存在するはずだからである。

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