フライペーパー効果を本で読んだら被災地義援金の在り方が少しは見えてきた

はじめに

これから述べる「分析」とは、小川光編『グローバル化とショック波及の経済学 -地方自治体・企業・個人の対応-』の第一部第三章で書かれていた分析である。それは約3200自治体について1977年から2001年を期間としたパネルデータを分析したものだ。




興味ある人は実際に本のほうも読んでください。(プロ向け)


わかったこと

経常的支出と補助金

t期に経常的支出(自治体を維持するための費用など)が増える
→ t+1期以降で補助金(国からの補助金)が増える

自治体を維持するためにお金ください。
⇒いいですよ。

この関係性を戦略的に利用する可能性があることが指摘された。つまり経常的支出が増えたら補助金は増えるという統計的な分析結果とは、現実世界で補助金が経常的支出を増やす動機になってしまっていることを指摘できるものだと言う。

補助金と投資的支出

t期に補助金(国からの補助金)が増える
→ t+1期以降で投資的支出(公共投資など)が増える

補助金を増やします。
⇒じゃあ公共投資します。

この関係性も戦略的に利用する可能性があることが指摘された。つまり補助金が増えたら公共投資は増えるという統計的な分析結果とは、公共投資に支出されることを見込んだうえで政府が補助金を増やすこともあるのだろうと洞察することができるし、であれば現実世界で補助金目当てで貰う前から公共投資をする動機になってしまっていることを指摘できるものだと言う。

フライペーパー効果

フライペーパー効果とは、地域住民へのあくまで貨幣的な還元があるかないかを重視し、国から補助金が貰えても当該地域が減税されにくい実態をいいます。

国が補助金を与えたら自治体は公共投資をしてしまったり、自分たちのやりくりに使ってしまったりして、住民税は減税されなかった。これでは貨幣的に還元されていない。これでは「フライペーパー効果」だという指摘になってしまう。もしかしたら公共部門が雇用を生むかもしれないし、公共サービスで地域が充実するかもしれないけどね。

しかし貨幣的に還元されないことは、どれくらいよくないことなのだろうか。もちろん「フライペーパー効果」を研究している研究者は、そもそも解決に値する課題だと思っているからね。そういう著者の著作を引用して、そこに疑問をもっちゃうのも失礼かもしれないけれど、実際はどれくらい解決に値するのだろうか。

新型コロナウィルス感染症の流行で国が給付金を支給したり、低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金が支給されたり、国民の貨幣的な充足は政治の問題意識になっていると言えるね。しかし国からの給付金はどうしても「全国一律」という手法になってくるものだ。お金が足りない人たちに多めに支給したい、足りない人の多い自治体に補助金を多めに出したら、そのぶん地域住民に多めにお金が行き届くという流れは目指すべきものではないだろうか。フライペーパー効果とは、それが成り立っていないという指摘だ。大震災など災害時のセーフティネットとして、特定地域住民の貨幣的な充足を、直ちに、目指すのであれば、自治体に補助金を出して自治体に義援金を支給させるよりも、国が直接に、このさい全国一律という原則を破ってまで、被災地義援金を企画して支給したほうがいいのだろうか。その可能性が高いと言うことになるね。

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