今ドーピングが禁止されている理由は、3つ挙げられている。 1つは選手の健康問題だ。ドーピングの重大な副作用は後遺症になることもあるから医師が反対している。 2つ目はもちろんフェアなスポーツ、ルールを守ろうということだ。現行ルールでドーピングは禁止なのだから、全員一律に禁止だということである。3つ目は麻薬などと同じように薬物によるパワーアップは反社会的であるということだ。
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瀧川裕英編『問いかける法哲学』法律文化社 より
サンデル・マイケル氏はスポーツを通じて美徳が実践されていると述べた。それは、人間が与えられた能力や資質の限界を受容し、そのなかで自らの能力や資質を最大限に開花させることである。そしてドーピングは、与えられた能力や資質の限界を受容することに反している。
ドーピングを禁止することは、人間活動への干渉であって自由を規制することである。ただしそれと同時に、ドーピングしないことを美徳とする価値観の保護もしているのである。
意見の対立 | ドーピングをする自由 | ドーピング禁止によって生まれる美徳 |
立場の対立 | ドーピングをする自由を見守る立場 | ドーピング禁止によって生まれる美徳を保護する立場 |
2023年9月にプロ格闘家がドーピング発覚によって半年間の出場停止処分を受けた。薬物による肉体に有利な効果は半年以上持続する可能性があるのになぜ半年間なのか(罰則が軽い)とする意見があった。その一方で、ドーピングしただけでプロ格闘家が務まるわけではないのに第三者がなぜ厳しいことを言うのか(目くじらを立てる風潮が嫌い)という意見もあった。