商学1
「大規模小売店舗法」と「まちづくり三法」を取り上げて、1970年代以降の日本における流通政策の変遷を説明しなさい。
解答例
大規模小売店舗法(大店法)とは、1973年に制定された、大規模小売店舗の出店を規制した法律である。ここで大規模小売店舗とは、スーパーマーケットなど、敷地面積500㎡以上の小売店舗のことである。スーパーマーケットは、特に1960年代の終わりから70年代初頭にかけての大量生産・大量販売の時代に、流通の担い手としてもてはやされた。同法は、その裏で深刻な打撃を受け続ける中規模、小規模の小売店舗を鑑みて制定された大規模店舗の出店規制である。それまで旧百貨店法で敷地面積1,500㎡以上と定められていた大規模小売店舗の出店規制は、500㎡以上という水準まで下げられたのである。
しかし大店法は、その後に何度も存廃が議論された。特にアメリカ合衆国から非関税障壁(このままではアメリカ合衆国企業が日本で出店できない)と指摘されるなどした。そうしたことを受けて規制緩和が法改正で実現したのは1992年のことである。
さて1992年施行の改正大店法は大型店の出店を容易にした。その結果として、地価の安い郊外に出店するショッピングセンターが増えた。やがてその郊外のショッピングセンターへ、余暇施設や公共施設が移転をはじめる。ここで余暇施設とは文化施設、娯楽施設や運動施設など、人々が余暇に求める欲求を受け止める施設である。これらは公共施設と共に中心市街地の集客施設であり、それらを目当てに集まる人々で、かつて中心市街地は賑わい、さらには小売店などが彼らを顧客として立地した。しかし拡大を続けるニーズに集客施設側が応えるにあたって、中心市街地よりも地価が安く広大な敷地を準備できる郊外という環境とは、大変に魅力的だった。やがて集客施設は、郊外に出店したショッピングセンターへのテナントミックスなどで、郊外へと移転していくのである。そしてモノを買うにしても集客施設とテナントミックスした郊外のショッピングセンターがよく選ばれ、中心市街地に取り残された小売は厳しい環境におかれた。
さて「まちづくり三法」とは、2000年6月に大店法の廃止に伴って施行された大規模小売店舗立地法(大店立地法)、1998年施行の中心市街地活性化法(中活法)、改正都市計画法をあわせた呼び名である。疲弊しつづける中心市街地に公共投資を集中し、民間の投資を誘発することによって中心市街地の再生を図ることを目的とし制定された。
【参考『日本の流通政策』石原武政,加藤司】