とぅるーす

男が、土曜日の郵便局にやって来た。土曜日は、どこも閉まっているが、さいたま新都心駅が最寄りのさいたま中央郵便局は、土曜日もやっていた。

男はさいたま中央郵便局にやって来た。

長蛇の列。昼過ぎ頃は窓口から玄関口まで長蛇の列だ。

しかし、何事もなければそれでも10分で掃ける。次々と人がくるので列の長さは変わらないが、待ち時間は電車より少し長いくらいかなと、男は思った。

しかしなんだろう。
たかが郵便局で待たされる。

男は、順番を待っていたが、とてつもないストレスだった。馬鹿にされた気持ちだった。たかが郵便局で長蛇の列。

そこへ、小さな子どもがやって来た。幼稚園に入るか入らないかくらいの、小さな子どもが。
小さな子どもが、割り込んできた。男の10人先くらいの位置を何故か選んで。

「お母さん!ここちょっと開いてるからここにしよう!」

すると若い金髪の母親があとから来て、平然とそこに並んだ。

男は叫んだ。

「割り込みですかあ?!」

男は大声で質問した。
母親は驚いた。
しかし「え?」という顔をしたが、列から動こうとはしない。

男は、列を出て、歩き、静かに母子に近づいて行った。
そして子どもの脇腹に、前蹴り(厳密には三日月蹴りと言う)をくらわせた。
男は空手を少しだけ習ったことがあった。

すぐに子どもは救急車で運ばれた。

医者の診断は脾臓破裂。
高額な手術を余儀なくされた。
術後も子どもはPTSDを患い、自閉症に典型的な生活になった。

しばらくしてニュースになった、父親が騒いだからだ。父親がテレビ番組の取材班に向かって犯人を許さない旨を叫んで話題になった。

お昼のワイドショーで、フリーアナウンサーの宮根誠司は言った。
「どうしようもない事件ですね」
そう言ってSNSで炎上してみせた。

夜のバラエティ番組でダウンタウンの松本人志は言った。
「ゆうたらあかんのやけど、こういうオッサンで成り立っとるんやで、蹴っ飛ばしたほうの」
「何をすっとんきょうな事を言うのかと思うかもしれませんが、蹴っ飛ばしたオッサンは未来から来た子どもです」

おしまい

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