東京で暮らす裕太(ゆうた)は、小学三年生の冬休みに東京ローカルのテレビ番組で衝撃的な映像を見た。テレビ番組では、沖縄の反基地運動家を罵倒する声が流れていた。沖縄が日本全体の米軍基地負担の多くを担っている現状に対し、基地を受け入れるのが当然だといった意見がある。基地反対運動は、迷惑行為や反日活動として一括りに非難される事がある。
売国奴!
反基地運動家は日本人であって日本人ではないと言いたいらしく。裕太は、どこか怖い気持ちになった。裕太が父に尋ねると、父は困ったような顔をしてこう答えた。
「米軍基地は、日本や東アジアの同盟国をアメリカが防衛してくれる為に必要なものだ」
それ以上の説明はなく、裕太の中にはモヤモヤとした疑問だけが残った。
裕太は小学一年生の時、課外授業で太平洋戦争について触れ、現代の沖縄にアメリカの海兵隊の基地があることも知った。米軍基地や米兵のせいで起きる環境破壊、事故、騒音や犯罪で苦しむ現地の人達の声を聞いて「可哀想だ」と思う気持ちが、東京の小さな教室で溢れたあの日の授業は何だったのか。なぜ反基地運動に罵声を浴びせるのか理解できなかった。そもそも沖縄の米軍基地は太平洋戦争で日本が敗戦した懲罰のような建造物だと思っていた。沖縄の人々に罵声を浴びせるなんて信じられない。裕太には忘れられない報道になってしまった。
それから月日が経ち、裕太は高校生になった。反基地運動家へのヘイトスピーチを知って以来、人一倍、社会問題に関心を持って育った裕太は、高校では重里(しげさと)という友人と知り合い、共に考える日々を過ごしていた。来月四月から二年生の裕太は、春休みのこの日、重里と一緒に、高校の近くにある図書館で勉強会をする。
裕太は、桜が咲くのは新学期が始まった頃だねと、重里に言う。
春風の吹き抜ける遊歩道に、冬を強かに耐えた草木の為の暖かさが満ちて、二人の歩く図書館までの道に前向きさが溢れる。僕達は大人になるとして、心ある人の支えで暮らす身分の辻褄のような優しさで、社会の中の声なき声を聴く事が出来たら、それはきっと平和を願う心になるだろう。
重里は、
「今政府が進めている沖縄要塞化は、すべきではない。国境を超えた社会包摂(誰もが社会の一員として尊重され、平等に機会や資源にアクセスできるようにすること)の産物が平和だという目線を軍拡派は一切持てていない」
と言う。
「重里は沖縄要塞化なんて怖い言葉を使うのか?」
「なるほど、すまない。しかし裕太が沖縄の人達を思いやっていても、政府はアメリカの主導する東アジアの安全保障政策に従うばかりだ」
裕太は、沖縄の人々の身代わりになれない事を、少年のように悔やんだままだ。重里の言う、アメリカの主導する安全保障政策への追従はヘイトスピーチの温床だろうか。ただ裕太は必要か不要かを天秤にかける事自体、あまり好きではなかった。
「重里はそう思うんだね。僕は、必要か不要かで悩むよりも、むしろ沖縄の人々の生活が犠牲になっている事が気になるよ。本土にいて必要か不要かを天秤にかける人は沖縄の人ではない、沖縄の人がいない」
裕太は、仲の良い重里だから率直に言った。裕太は、たとえば以前に動画配信サイトで見た市街地を飛ぶオスプレイもよく覚えていた。まるでバスや路面電車のように公然と沖縄の市街地を低空飛行するオスプレイは、東京の空しか知らない裕太には衝撃的だった。
裕太は、どうしても沖縄の米軍基地とは、太平洋戦争の際に奪われた土地がまだ返って来ていないという事、アメリカ軍に占領された名残、敗戦の罰という見方を禁じ得ない。
「沖縄の人々は罰を受けていると思っているのだろうか」
重里は、それは東京で悩んでいても全く見えて来ないと言う。確かに裕太は、想像を絶する戦闘機の騒音を直接体験した事はない。いつか現地に行かないと分からないだろうと。高校生の裕太の沖縄旅行はまだ実現していない。一人で行ける年齢になってから行くと良いと、父から言われた。たとえば運転免許を取ってから行くと現地で足がある。裕太は、僕は反基地運動家になりたい、将来そのようなアクティビズムを行いたいと重里に打ち明けた。沖縄に行った事も、沖縄人に会った事もない裕太の動機とは、憐憫というのが相応しいだろう。裕太は、それを人が当たり前に持っている感情だと思う。
日本では、有事に備えた防衛政策が議論されてきた。主に想定される有事は三つある。一つは北朝鮮が韓国に進軍する「朝鮮半島有事」、二つ目は中国が台湾に進軍する「台湾有事」、三つ目は中国が尖閣諸島に進軍する「尖閣有事」だ。これらのシナリオにおいて、特に朝鮮半島有事と台湾有事では米海兵隊が出動する可能性が高いとされている。それが沖縄に米軍基地がある意味と目的だ。外国の軍事力が戦後依然として沖縄に鎮座するこの社会問題は、日米安保条約や日米地位協定への沈黙に守られている。必要か不要かを悩む議論は闊達とは言い難い現状がある。沖縄の人々の暮らしなど、よりいっそう蔑ろにされて今があるのだ。
二人は戦争を憎んでいる。平和主義者とは、世相を解説する事が出来なくても構わない。今ここに平和を愛する者がいると伝える時には「戦争に行きたくない」と言えば、それで良い。それでも考える道を、二人は歩んで、今がある。二人は高校生の自由な発想で、本を読み、遠望したり、臨場感を回復したりしながら、互いの言葉を交わしながら、沖縄米軍基地について考え続けた。
新学期になれば二年生の二人。
そして新学期とは、春の嵐のような出来事だった。桜が咲いた東京の街、高校二年生に上がった裕太と重里のクラスに春の嵐はやって来た。春の嵐とは、件の沖縄本島から転校してきた陽葵(ひまり)という女子生徒だった。陽葵の両親は、彼女の将来を考えてこの春に東京に移住した。陽葵の家族は大学進学に向け良い環境だという理由で東京のファミリーマンションに越してきた。
陽葵は、長い黒髪に褐色の肌をした活発そうな女子だった。担任の教諭に招かれて黒板の前に立つと、一呼吸してから、大きな声で自己紹介をした。
「陽葵です!ひまりって呼んでほしいな!東京、ずっと行ってみたかったさー!勉強頑張るつもりだよー!よろしくねー!」
「東京、行ってみたい場所いっぱいあるし楽しみさー!沖縄にいた頃からずっと憧れてたさー!やっぱ東京は特別な感じがするよねー!仲良くしてくれると嬉しいなー!」
陽葵は、クラス全員を前に自己紹介をした。この賑やかな印象の、沖縄流の挨拶に教室がどよめきながら、陽葵は廊下側の一番前の席に着く。
裕太が、突如やって来た沖縄少女に呆気に取られていると、
「陽葵!よろしく!」
と後ろから智弘(ともひろ)の大きな声がした。陽葵が振り返ると、右手を高く挙げて笑う智弘が「ともひろです!」と声を張り上げた。智弘は学校でも人気の男子生徒だ。サッカー部で、髪を刈り上げて、背も高い。
陽葵は振り返って、嬉しそうに笑う。
「智弘君!はじめまして!よろしくねー!仲良くしよー!」
するとクラス中が声を上げて笑った。陽葵はあっという間にクラスの人気者になった。やがて沖縄特有のフランクで人懐っこい性格が、夏の海で波に乗るサーフィンボードのように、陽葵は男女問わずクラス中から愛されていく。笑顔に吸い寄せられるように、皆が陽葵に心を開いて行く。
陽葵は明るい声で、智弘と話す。
「智弘も、皆も、なんか優しいねー!」
「陽葵は東京の大学に行くつもりで引っ越したのか?」
「そうだよー!東京の大学、ちょっと行ってみたいさー!」
裕太も陽葵と話してみたかった。沖縄の暮らしはどんなだったのか、米軍基地をどう思うのか。東京で暮らしていては分からない事を沢山知っているはずの陽葵に教えて欲しいと思った。ただし裕太は、率直にそのような話題をすると嫌われる気がして、躊躇った。
裕太は、
「桜が散ったら、東京はまだ肌寒い日もあるけれど、これから暑くなってくるのだろうなって思えるよ」
と言う。
陽葵は、
「裕太、なんで天気の話するさー!将来お天気キャスターにでもなるつもりかー?暑くなってきたら何するんだろうなー?ちょっとワクワクするさー!」
と言って、意味深に天気の話をした裕太を笑った。しんとした黒髪がカーテンのような陽葵の後ろ姿が、正面から見た屈託ない笑いと対照的だった。陽葵の甲高い声を聴いて、裕太は生命を感じた。そして将来やりたいアクティビズムに、この気持ちが混ざり合う。その日から裕太はヒントを貰うよりもむしろ、陽葵の明るさと黒髪に心を奪われるのだった。こんなに元気で活発な子がやって来て。陽葵は、裕太が沖縄の人々に抱いていた憐憫を強烈に塗り替えていく。
それから本当に桜が散って、青々とした風景に暖かさが、夏の足音に変わる四月の下旬を過ぎる。裕太と重里は相変わらず、図書館で活動する日々を過ごした。裕太は悩んでいた。陽葵に米軍基地の事を尋ねるべきか、どうか。陽葵に、沖縄の人々は米軍基地を敗戦の罰だと思っているのかと、尋ねたい。しかしその質問は、陽葵の心を曇らせるだろう。
始業日に声高らかに陽葵に挨拶した智弘は、陽葵と日を追うごとに仲良くなっていた。教室では背の高い智弘の顔が、陽葵の頭からはみ出る絵がここのところずっと見受けられた。仲が良いなと、裕太は思って、陽葵に抱いた気持ちを穏やかに胸にしまい込んでは、その気持ちが胸の中で燻るのだった。
智弘の友達の楓(かえで)は、陽葵を毛嫌いせず仲良くしていた。
裕太の友達の美咲(みさき)は、裕太が、陽葵と打ち解けていないように見えたので、ある日、裕太を連れて陽葵に話しかけた。
「陽葵ちゃん。智弘君って、ほんとイケメンだよね」
「うん」
「『イケメン』って沖縄でも言うの?」
「言うよー!」
「裕太みたいな人は何て言うの?」
「裕太は髪型がアッパレだねー」
美咲は、
「裕太みたいな人は髪型がアッパレなんだね、教えてくれてありがとう」
と言った。
「裕太は、髪型がアッパレなんだって」
「美咲、ありがとう。髪の毛を大事にする」
陽葵は、あっはっはと笑って、嬉しそうだった。
美咲は、機嫌の良さそうな陽葵に、
「陽葵ちゃん。五月の連休は遊びに行こう。智弘君と楓ちゃんも誘って」
と言う。
「いいよ!どこでも行くさー!」
「裕太もおいで。陽葵ちゃん、遊びに行きたいって」
陽葵も、嬉しそうに、
「裕太も来てよー!」
と言った。
裕太は、一瞬の突風に吹かれたようで、心穏やかに、
「行くよ」
と頷いた。
美咲が、じゃあ決まりだねと言うと、五月の連休は、重里も入れて六人で東京のお台場、浅草や原宿を見て回った。陽葵には異国風情のような東京を、丁寧に教えてあげた。裕太は、子どものようにはしゃぐ陽葵を、神様が落とした雫のように拾い集めては、胸に埋め込んだ。それはやがて、陽葵に米軍基地の話をしようか、しまいかという、裕太自身の顔を鏡のように映し出すものの、裕太は陽葵の笑顔に貼りかえる。もっと重里と言葉を交わすように、陽葵の持つ沖縄の記憶に触れて、沖縄を知りたいと思っているのに。裕太の心の中にいる米軍基地反対のヒーローは、そんな勇気もなく、裕太は不甲斐ない彼の顔に陽葵の笑顔を貼り付けて、友達になってねと呟く。
裕太は、陽葵が塗り潰した沖縄の人々への憐憫を思い起こそうとはしなかった。それよりもむしろこれから大勢の沖縄人に出会い、様々に塗り潰していけば良いと思った。それでいて陽葵を、長い黒髪の女の子を心のアルバムにしまい込んで、徒に整理などせず喜んでいた。
ある雨の日、学校帰りの裕太は、駅で偶然に陽葵を見つけた。いつもは誰かと一緒にいる陽葵が、一人で駅構内の改札前のベンチで座っていた。電車に乗って帰ればいいのに。
雨音のように自然な声で、裕太は陽葵に話しかけた。ひまりと言って声をかけた。キョトンとした陽葵の顔が、柔らかに変形して、
「お天気キャスターの裕太ー!今日は雨だって言いに来たんかー?」
と言う。
「いや、陽葵にしては珍しいなと思って。どうしたんだろうと思ったんだ」
「何が珍しいのー?って感じさ!」
「一人でいるところが珍しいなと思って」
「私だって一人でいたいときはあるさー!」
それを聞いて颯爽と去って行く事を裕太は躊躇った。一人でいたいと言われて、わかったと言って去って行く事を、遮断機のような緊張感で拒んで。横切る感情をやり過ごすように、陽葵を見ていた。
やがて裕太は、
「どうしたの?」
と言った。
陽葵は、
「智弘からデートに誘われたんだー!これ、行ったら『付き合いたい』って事だよね、たぶん!どうするさー?」
と言った。陽葵は、どうやら智弘に誘われたらしかった。連休は男女で遊んだけれど、今度は二人きりのデートに誘われて。裕太は気の利いた言葉を何も言えない。ただ、行かないで欲しい。来て欲しい智弘に悪気はないだろう。行かないで欲しい裕太にも悪気がない。陽葵が行きたいなら行けば良いさと言ってしまったら、裕太は、この雨の日で雫のように終わると思った。
陽葵は、椅子に腰かけたまま鞄から携帯電話を取り出すと、
「裕太、連絡先、交換しようさー!」
と言った。陽葵は、まるで自分に雨宿りするような裕太にあえて心を開いて、陽葵自身の雨粒をくれてやったのだ。静寂と雑踏が入り乱れた音の只中で、雨粒のような陽葵が、裕太を暖かく打ち据える。
「はい、陽葵」
裕太は、ポケットから携帯電話を取り出して、メッセージアプリの連絡先を交換した。
「裕太からも誘われたって言うからなー。お天気キャスターの裕太がそんなのあるはずないやんな!ホントかよーって感じさ!」
裕太は、陽葵の顔を見て、裕太の心の中の米軍基地反対のヒーローは、そんな勇気もなかったから、笑った。梅雨入り前の東京は、明日が晴れる。
「陽葵は、東京の空が好きか?」
「東京の空が好きって、どういう意味さ?」
「吹き抜けるような青と白い雲の固まり」
「そんなの、沖縄だって一緒だよ!青くて広くて、星もめっちゃ見えるしさ」
陽葵は、東京の空も、沖縄の空も変わらないと言う。人の笑顔も、きっと。裕太の中で、沖縄の人々に抱いていた憐憫がまた陽葵によって塗り潰されていく。
陽葵は、クスっと笑うとどこか意味深に、
「裕太はさ、ハンバーガー、どこで食べるわけ?」
と言った。裕太は、少し唐突な問いにも喜んで、
「最近SNSで話題の大きなハンバーガーのお店に、まだ行けてないよ」
と答えた。
「あれね、裕太、行ってみたいわけ?」
「SNSに投稿された写真が気になって」
陽葵は一呼吸置いてから、
「米軍基地で売ってるのと同じくらいデカいさー!」
とわざと大きな声で言った。
裕太はギクッとした。陽葵から「米軍基地」と言われて、驚きが勝っても不安が心臓を掻きむしるように熱くなった。裕太は、陽葵の顔をハッとして見る。陽葵は、裕太の顔を見て、ほんの一瞬嘲笑のような表情をした。
裕太は、僕は、大人になったら反基地運動家になりたいんだ、沖縄の人々を助けたい、と言って、続きを言いかけた。裕太は、もしかしたら良くない事をしているのだろうかと、間違った事を言っただろうかと思った。陽葵は、楓から、裕太が政治の勉強をしていると噂を耳にしていた。楓は、裕太は米軍基地の話がしたい目的で隣に寄って来るんだよと、少し悪気があってそう告げ口していた。
「裕太って、恥ずかしがり屋なんかね?なんか、そういうとこある気するさー」
陽葵の言葉に、裕太が息を飲むと、陽葵は、
「東京ってさ、戦闘機が飛ばんから、あのゴーって音がないのはいいさぁね」
と言った。
「そんなに大きな音なのか?」
「たぶん、想像できんはずよ」
「陽葵。想像も出来ない僕は滑稽かな?」
「裕太みたく知りたがる人が滑稽なんだったら、沖縄の人はどうなるわけ?」
「そうだね。その通りだ、自分を貶めてはいけない」
「なんで沖縄の人、助けたいと思うのさ?」
「果物を均等に分け合うのと同じだよ」
陽葵は、滑稽ではないと言ったばかりにも関わらず、そんな事を平気で言うのはヒーローか、弱虫君さ、と思わず口に出した。ヒーローか、弱虫君か、裕太は、心臓の熱を感じて、後から、後からジワジワと「打ち明けてしまった」と思った。子どもの頃、果物を均等に分け合った道徳的価値観を、成長しても頑なに人間的核心に据える事で、必ずしも社会の繁栄を目的とせず、格差なき事を願い人間愛を育てていく。裕太はそんな青少年だ。裕太は、心の中の米軍基地反対のヒーローの顔を打ち明けるように話し続けた。車の運転免許を取得したら必ず沖縄本島に行くと言ったり、もっと沢山の沖縄人に会いたいと言ったりして。陽葵から、弱虫君ではいけないと、たった今言われたようなものだから。
陽葵は、携帯電話に保存してあった戦闘機の写真を何枚か見せた。肉眼で見る空に覆いかぶさる捕食者のような低空飛行の戦闘機には、異次元の不快感があった。裕太は、自分とは無知で浅薄だったと知る。やはり陽葵が思わず言ったように、自分とは弱虫君ではないかと思ってしまう。
陽葵は、陽葵と比べたら無知に近い裕太の話にしっかりと耳を傾けて聴いていた。まるで黒髪のカーテンを閉め切った部屋で、二人きりのような時間をかけて。陽葵は、黒髪が包んでいた記憶を教えながら、裕太は、人が当たり前に持っている優しさを向かい合わせながら。
小一時間して陽葵は、帰るねと言って、帰って行った。陽葵にとって、裕太達が東京になる。裕太は、気を付けて帰ってねと言って、弱虫君ではない自分を見せつけるように、溢れだした愛情を陽葵に注いでしまうのだった。
裕太は、陽葵が好きだと思うから、女の子を守る精神に憧れて、人一人守れずしてなんだと思う。裕太は、陽葵を神様が落とした雫のように拾って、世相を俯瞰する精神に埋め込んだ。それが裕太の将来やりたいアクティビズムの核心になるにせよ、いつか愛する者になっていくにせよ、大切なものだ。