プラスチックごみの削減やリサイクル強化などを目指す「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月に施行された。飲食店、小売店、ホテルやクリーニング店などで、スプーン、フォーク、マドラー、ストロー、歯ブラシ、ヘアブラシやハンガーなどのプラスチック製品を削減することが求められている。
このような取り組みは事業者のコスト増や利用者の満足度の低下などが懸念されている。以上のことを踏まえ、事業者のプラスチックごみ削減やリサイクル強化の推進について、今後どのようにすべきか、理由を書いて、あなたの考えを述べなさい。(一部改訂)
解答例
日本の廃プラスチック(以後、廃プラ)の多くは、焼却か、海外へ輸出かで処理されている。リサイクル方法は大きく3つある。分解して石油やガス等に戻すケミカルリサイクル、新しいプラ製品の原料にするマテリアルリサイクル、固形燃料にしたり、焼却して熱エネルギーとして再利用したりするサーマルリサイクル、この3つだ。
国内でリサイクル率は2012年から2020年まで継続して80%を超える高い水準だが、リサイクル方法は半分以上がサーマルリサイクルだ。それに2021年から始まった廃プラ輸出規制もあり、日本はケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルのための投資をする必要(c.f.地球温暖化対策、GX構想)があるだろう。日本は後発国なのだ。
しかし人口減少の日本で、廃プラを含めリサイクル産業の市場規模は今後縮小する見通しが主だ。その一方で、世界では人口増加や途上国開発でリサイクル産業の需要は拡大する見通しもまた主流だ。実際、既存の技術を、廃プラを河川や海に投棄するレベルの後発国(アジアの途上国)へ移転するべく海外進出する企業はある。国内でケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルのための設備投資を受注する企業や研究開発等をする企業ばかりではない。
廃プラ削減は、単純に欧米に足並みを揃える意味以上に、日本国内の社会資本を鑑みて必要なことだと思われる。
プラ製品のメーカーにとって、たとえば使い捨て歯ブラシは薄利のビジネスだ。高級ホテル向けでも一本10円台の売り物を、使用後に回収し分解して廃プラにする手間をかけることが非現実的なのだ。脱プラで高コスト化した備品は、ホテルなら有料化して客に負担してもらうか、もしくは必要な客がフロントに貰いに来てもらうなどが現実的な対策になると言う。消費者は、脱プラで負担が生じたり、サービスの質が落ちたりしたとしても、脱プラに取り組んでいる企業にポジティブな評価を与えるべきだ。企業は経済活動のメンバーシップとして脱プラを受け入れるべきだと思われる。