日本ケアラー連盟とケアラーの実態

ケアラーとは?

ケアラーとは、家族や近親者、友人や知人などに対して「介護」「看病」「療育」「世話」「気づかい」などのケアを無償で行う人々のことを指します。近年、「ヤングケアラー」という言葉が注目されていますが、これは本来大人が担うべき家事や介護を日常的に18歳未満の子どもが行っているケースを指し、社会的な問題となっています。

呉市のケアラー実態把握調査

2024年5月、広島県呉市はケアラーの支援に役立てるため、「ケアラー実態把握調査」を行いました。この調査には、高齢者のケアをする354人、障害児や障害者のケアをする208人が回答しました。
調査の結果、ケアラーの約8割が50歳から79歳であり、高齢者の介護をするケアラーの年齢層が60歳から69歳が34.5%で最も多いことが明らかになりました。また、80歳以上のケアラーも全体の1割を占めており、老々介護が広く行われている実態が浮き彫りになりました。

ケアラーの生活への影響

ケアラーの介護年数に関するデータによると、高齢者ケアの平均介護年数は5年以上10年未満が最も多く、障害者や障害児のケア年数は20年以上が最多でした。この長期にわたるケアが、ケアラーの生活や人生に大きな影響を及ぼしています。特に、高齢者ケアラーの健康問題が深刻で、「疲れが取れない」「睡眠不足」「気分が沈みがち」「体調を崩す」「肉体的疲労」といった問題が多く報告されています。

ケアラーの声

日本ケアラー連盟の代表理事で呉市在住の児玉真美さんは、重度の障害を持つ娘・海さんのケアを行っています。児玉さんは市役所に支援を求めたものの、「普通は母親が見るもの」と突き放され、仕事を辞めざるを得なかった経験があります。この経験から、ケアラーが「母親だから、家族だから介護をして当たり前」という社会通念に苦しんでいる現実を痛感しました。
ケアラーは献身的にケアを行っていますが、その負担が限界を超えると、虐待や過労死といった深刻なリスクに直面することもあります。児玉さんは、ケアラーを社会全体で支える仕組みが必要だと訴え、日本ケアラー連盟は「ケアラー支援法」や条例の制定を求めています。

ケアラー支援の取り組み

全国では、26の自治体がケアラーを支援する条例を制定しています。例えば、北海道栗山町は3年前に「ケアラー支援条例」を制定し、社会福祉協議会と自治体が連携してケアラー支援を強化しています。この取り組みにより、ケアラーの外出や疲労回復のための短期入所サービスや、ヤングケアラーについて理解を深める講座が実施されています。
呉市の職員も栗山町を視察し、ケアラー支援について研修を受けました。このような取り組みが広がることで、ケアラーとケアを受ける人が自分らしく生きられる社会が実現することが期待されています。

まとめ

ケアラーの存在とその役割は、社会にとって欠かせないものでありながら、その負担は非常に大きいものです。ケアラーが健全に生活し、ケアを続けられるようにするためには、社会全体での支援と理解が不可欠です。ケアラー支援の制度や条例の制定を通じて、ケアラーが孤立せず、適切なサポートを受けられる環境を整えることが急務です。

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