専門家に聞くヤングケアラーの現状
ヤングケアラーに関する調査・研究を行っているのは、成蹊大学文学部現代社会学科の澁谷智子先生です。先生は『ヤングケアラー ―介護を担う子ども・若者の現実』などの著書を持ち、この分野での権威です。
ヤングケアラーという言葉は、1980年代後半にイギリスで生まれました。ケアを担う家族に対する支援の一環として、ヤングケアラーに注目が集まりました。全国規模の調査を通じて、ケアをしている子どもたちの存在が明らかになり、支援が進められてきました
驚くことに、イギリスでは約25年前からヤングケアラーに対する対策が行われていたのです。日本では2015年に「日本ケアラー連盟ヤングケアラープロジェクト」が本格的な調査を実施しました。この調査では、南魚沼市の公立小中学校の教職員のうち4人に1人が「家族のケアをしている児童・生徒がいる」と感じていることが明らかになりました。
変わる家族の形と介護の現実
澁谷先生との対話の中で、家族の形が大きく変わっている一方で、介護に対する古いイメージが根強く残っている現実に直面しました。共働き世帯は1980年の614万世帯から2018年には1219万世帯に増加し、ひとり親世帯も1988年の84.9万世帯から2011年には123.8万世帯に増加しています。
家族が家族を支える力は減っていますが、周りのプレッシャーは依然として強いです。このプレッシャーがヤングケアラーの問題をさらに深刻にしています。
現場の実情とこれからの支援
「人生100年時代」と言われる現代では、高齢者のケアがますます重要になっています。しかし、支える家族の力が減少する中で、ヤングケアラーが増える状況ができています。澁谷先生は、ケアをする子どもたちの声を拾い上げ、支援を充実させる必要性を強調しています。
最後に
ヤングケアラーの問題は、家庭内だけでなく社会全体で取り組むべき重要な課題です。日本での支援はまだ始まったばかりですが、今後も調査や支援プログラムの開発を進めることで、子どもたちが安心して生活できる環境を整えていくことが求められます。