はじめに
不登校の子どもが増加している現状に、多くの家庭が悩んでいます。特に共働きやシングルマザー・ファザーの家庭では、子どもをひとりにすることに大きな不安を抱えながらも、仕事を続けなければならないという状況に直面しています。本記事では、仕事と子育ての両立、不登校問題の乗り越え方について考えてみます。
不登校問題の現状
不登校の子どもが10年連続で増加していることが文部科学省の調査で明らかになっています。2022年度には全国の小中学校で30日以上学校を欠席した不登校の児童生徒が29万9048人に達し、過去最多を記録しました。特に中学生の不登校率は高く、16人に1人が不登校という状況です。不登校の原因はさまざまで、いじめや学校環境に起因するものから、本人にも原因がわからないケースまで多岐にわたります。
共働き家庭の悩みと対策
相談内容の具体例
専門家に寄せられる相談の中には、次のようなものがあります。「中学生の子どもが不登校になり、ひとりにするのが心配です。しかし、仕事に行かなければならない場合、どう対処すればよいのでしょうか」。このような状況下で親が冷静に判断し、適切な対策を講じることは容易ではありません。
カウンセリングの限界
不登校の問題に直面したとき、まずは学校や行政のスクールカウンセラーに相談することが一般的です。カウンセラーは、子どもと親の状況を丁寧に聞き取り、その家庭に最適なアドバイスを提供します。しかし、すべてのケースがカウンセリングだけで解決するわけではありません。カウンセラーとの相性や、カウンセリング自体では対処しきれない問題も存在します。
課題の整理
不登校問題に取り組む際には、「子どもの課題」「自分の課題」「共通の課題」に分けて整理することが有効です。例えば、「子どもが学校へ行かない」というのは「子どもの課題」であり、仕事をどうするかは「自分の課題」、心が不安定な子どもをひとりで家に置いていくリスクは「共通の課題」として考えられます。
子どもの課題
子どもが不登校になる原因や解決方法は子ども自身が見つけていく必要があります。無理に学校へ行かせることが目的ではなく、子どもが自分のペースで悩みを克服していくことが重要です。親は子どもを信じ、支えながら待つ姿勢が求められます。
親の課題
親自身も「自分の課題」と向き合う必要があります。仕事との両立やストレス管理、自分自身のキャリアについて考えることが大切です。親が自分の課題に向き合わないと、子どもへの責任転嫁や不適切な対処が生じる可能性があります。
共通の課題
「ひとりにしておくことのリスク」については、親子で話し合うか、信頼できる第三者を交えて解決策を見つけることが有効です。具体的な解決方法を見つけることで、親子双方の不安を軽減することができます。
不登校問題の解決事例
例1:母親の仕事ペースを変えずに対処
中学3年生の女の子が原因不明の不登校になったケースです。スクールカウンセラーの仮説では、母親が仕事で不在であること自体は問題ではなく、「親がどこにいるかわからない」という不安が問題の根本にあるとされました。母親は仕事のペースを変えず、「子どもから連絡があったときは可能な限り対応する」「退社時には必ず連絡する」という方法を取りました。これにより、子どもは親の存在を感じ、次第に心が安定し、学校へ行けるようになりました。
例2:仕事をセーブし、子どもと向き合う
中学1年生の男の子が不登校から万引きにまで発展したケースです。母親はシングルマザーで、仕事を辞めることはできませんでしたが、在宅勤務や勤務日数を減らすことで、子どもと過ごす時間を増やしました。これにより、子どもとのコミュニケーションが増え、問題行動がエスカレートすることを防ぎました。
結論
不登校の問題に直面したとき、親は冷静に課題を整理し、適切な対策を講じることが求められます。子どもの問題を理解し、サポートする一方で、自分自身の課題にも向き合うことが大切です。共働き家庭やシングル家庭においても、工夫次第で子どもと向き合う時間を確保し、不登校問題を乗り越えることが可能です。専門家の助言を参考に、家庭ごとに最適な対策を見つけていきましょう。