討論の記録①人工知能は雇用を奪うか

(最終更新 2021/2/18)
討論者A~Eは大学のレポート課題を話し合って取り組むことにした。以下が論題である。

 

論題
いま急速に発達する人工知能は近い将来に人間の雇用を奪うと言われている。それまで人間の労働者がしてきた仕事を人工知能がかわりにする時代が来て、人間の労働者は失業してしまうのではないかという問題が取りざたされている。これについて討論せよ。

 

討論者A
「ここはひとまず人工知能とはロボット技術だとして考えてみよう。人間同然のロボットが作れてしまった後の世界を考えてみよう。」

 

討論者B
「あくまで架空の世界を考えるのかな?」

 

討論者C
「いつになるかわからないけれど、人間同然のロボットが生産される時代を考えると言うことかしら?」

 

討論者A
「そうだね。架空の話になってしまうけれど、いったんはそれで考えてみよう。人工知能に何ができて、何ができないのか、技術的な話は全然知らない人もいるからイメージしやすい話からはじめようよ。」

 

討論者B
「高層ビルの清掃など、人間では危険が伴う仕事はロボットの方が向いているんじゃないかな。危険を伴う仕事と言えば、原発事故のときに、放射能の後始末の仕事を防護服を着た人間がやっていたね。僕は見ていて不安だったよ。」

 

討論者D
「事故原発作業のような、もともと働き手がほとんどいなかった危険な仕事はまさにその通りだと思います。」

 

討論者B
「どういう意味かな?」

 

討論者D
「たとえば高層ビル清掃の労働者たちは長い時間をかけて熟練した技術で働いています。危険だからと言って、失業すればよいのですか?高層ビル清掃に限らず、熟練の必要な仕事をしている労働者には、これまでの人生や、これからの生活があるのだから、彼らにとって良い話とは限らないと思います。いままでの熟練が活かせる仕事がなければ、次の仕事に就いてもまた一からはじめるわけですから、収入は減ってしまうはずです。「NO!」と言う労働者はかなり存在するはずです。」

 

討論者C
「ちょっと待って。労働者が「NO!」と言えばロボットに雇用を奪われずに済むのかしら?もしもロボットを使うほうが経営者にとって都合がよかったら人間の労働者は解雇されてしまうし、解雇されたままだと思うわ。」

 

討論者B
「困ったな。労働者の生活とか、経営者の都合とか、考えもしない単語がたくさんでてきてしまった。」

 

討論者A
「いま皆の考え方がバラバラだね。これでは話し合いが難しいね。」

 

討論者E
「Cさん、Dさんの言っていることは、実際にロボットが人間の雇用を奪ってから、その後で浮かび上がってくる問題だね。そのためにはまず経営者がロボットを採用しなくちゃいけないから、経営者がロボットを雇いたくなるかどうかを、真っ先に考えるべきじゃないかな。経営者がロボットは要らないと言ったら、そもそもそれまでだね。」

 

ここで5人はよく話し合い。論題を次のように再設定した。そのまま改題を5人で話し合い、まとめた。

 

改題
将来、自動運転技術の進歩によって無人タクシーが可能になった世界を考えよう。いまタクシー会社は、必ずしも人間のドライバーを雇用しなくてもタクシー会社を運営できるとする。ここで無人タクシーばかりのタクシー会社のメリット・デメリットを考えよう。

 

無人タクシーが発明されたとして、無人タクシーは設備なので、タクシー会社は繁忙期と閑散期の需要の変化にあわせ、無人タクシーの稼働を制御することで供給を柔軟に調節できるだろう。旅客の多い時期は無人タクシーを多く走らせ、旅客の少ない時期は無人タクシーを少なく走らせればよいのである。ここで人間のドライバーは労働者だから、彼らの生活を考えれば、繁忙期に増員して閑散期に解雇するなどの対応は困難もあった。その辺りが改善され、費用は安く済むかもしれない。しかし無人タクシーのタクシー会社は、他社と価格以外で競争していく場面で、つまりサービスの質が問われる場面で、より優れた自動運転技術を搭載した無人タクシーを揃える必要が後々に出てくるのではないか。そのための資金が必要になる。つまり市場での競争まで考えたときに費用は安く済むとは限らないだろう。

 

討論者A
「経営者になりきってみると難しいね。競争的環境を考慮したとたんに判断が難しくなったね。」

 

討論者B
「自動運転車を開発している会社も、それを売ってお金を稼ぐわけだから、買ってもらえるような価格にするはずだ。たとえばシェアの大きなタクシー会社には低価格で自動運転車を売るなど工夫をしたりするんじゃないかな。」

 

討論者D
「それはタクシー市場で公正な取引が損なわれるようであれば法律の問題にもなるかもしれませんね。」

 

討論者B
「どういう意味かな?」

 

討論者D
「わかりやすい例を挙げると、いま日本の携帯電話市場が寡占で、その一方で携帯電話を前提とするアプリ市場が概ね競争的なのですが、ここで携帯電話会社が人気アプリを使い放題にする特約(c.f.ゼロレーティング)を作って自社契約を伸ばそうとすると、アプリ市場での競争は歪められてしまいます。こういった場合は公正取引委員会が是正を求めるよう指摘をしたりしますよ。」

 

討論者E
「Bさんは自動運転車を開発した会社が、自らすすんで特定のタクシー会社を優遇する話をしていたけれど。その逆で、不利な扱いを嫌ったタクシー会社に課金を要請するような事態にもなるかもしれない。これも当局が厳しい指摘をするケースだね(c.f. GAFAの情報独占)」

 

討論者C
「そういえば便利な技術が生み出されてから普及するまで、いままではどうしてきたのかしら?様々な便利なものが、後から後から、生み出されては、社会を変えてきたと思うわ。」

討論者A
「そうだね。人工知能に固有の課題と、様々な技術に共通する課題を分けたほうがいいね。いま話しているのは、IT技術に共通する困難さだと思う。いずれにせよ過去の事例を援用しながら考えると説得力があるかもしれないね。」

5人は、ここからは各自でレポートを書き上げることにした。

【関連する発展的な出題】日本大学商学部(3年次編入試験・2020年度)電気自動車や自動運転、シェアリングサービスの登場など、近年ものづくりやサービスのあり方に大きな変化が見られる。このような変化がわれわれの社会経済や生活に与える影響について、あなたの意見を720字以上800字以内で述べなさい。
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