古代における規模の経済と貴金属

古代の農業生産。規模の経済とは重大なジャーゴンだ。ここで規模の経済とは、灌漑工事が大規模であるほど、全体として手間はかかるが、単位面積当たりの工事費用は小さくなることを言う。規模の経済が働く限り、大規模灌漑を実現すれば効率よく人口を賄えると期待される。これが肥沃な大地の上に統一王朝や巨大帝国が、場合によっては協調的に、成立するインセンティブなのである。

さらに具体的にエジプトとメソポタミアの経済を対比するならば、貴金属(金と銀)は致命的だ。ファラオ(王)が金を独占したエジプト、商人と銀を媒体とする交易ネットワークを実現したメソポタミア。つまり貴金属が宗教的なパワーとして使われたか、実用的な貨幣として使われたかで、両者には大きな違いがある。歴史家達は、これを肥沃な大地の外に住まう人々に対する関係性に関連付ける。ここに地政学的な対比を関連付けることも可能だ。つまり砂漠、海、瀑布に囲まれた堅牢なエジプト、要害のない沖積平野であるメソポタミアでは外からの侵略可能性が大きく異なり、メソポタミアは外界との友好的対話を要したというわけだ。経済人類学の知見を援用すれば、その友好的対話を可視化したものが交易ネットワークだと気づくことができる。もちろん対話の結果、関係性が常々友好的だったとは限らないわけであるが。

参考:
『経済史の構造と変化』著)ダグラス・C・ノース 訳)大野一
『世界経済全史』著)宮崎正勝
『経済人類学』著)栗本慎一郎

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