2020年埼玉県が全国初のヤングケアラーの大規模実態調査
埼玉県が全国初のヤングケアラーの大規模実態調査を実施し、その結果が日本全体のケアラー支援の取り組みに大きな影響を与えたことは、非常に注目すべき事例です。この調査と支援策について、埼玉県の地域包括ケア課の担当者である石井悠史さんの話を通じて見えてきたことを、以下にまとめます。
埼玉県が先駆けた背景
- 急速な高齢化:
埼玉県は近年急速に高齢化が進み、75歳以上の後期高齢者の数が全国でもトップクラスのスピードで増加しています。これにより、ケアが必要な高齢者が増え、そのケアを担う人々の負担が増大していることが背景にあります。 -
ケアラー支援の重要性の認識:
2016年頃から高齢者ケアの負担増加に伴い、ケアラー支援の必要性が強く認識され始めました。特に、ヤングケアラーと呼ばれる18歳未満の子どもたちも支援の対象に含めることが重要視されました。 -
地域の連携と民間団体の協力:
ケアラー支援の必要性を訴える民間団体の声を聞き、地域包括支援センターの職員向けの研修を実施するなど、地域全体でケアラー支援に取り組む体制が整備されていきました。県議会のプロジェクトチームが中心となって、支援策の検討が行われました。
ヤングケアラー実態調査の詳細
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調査の規模:
埼玉県内のすべての高校2年生を対象に実施されたこの調査は、全国で初めての大規模なヤングケアラーの実態調査となりました。その結果、4.1%の高校2年生、約25人に1人がヤングケアラーであることが明らかになりました。 -
調査結果の分析:
調査によると、ヤングケアラーの中には1時間未満のケアを行っている子もいれば、6時間以上のケアをしている子もいました。また、学校生活において「孤独を感じる」や「ストレスを感じる」と答えた子が多く、悩みを話せる相手がいない子が25.4%もいることがわかりました。 -
自由記述の分析:
調査票の自由記述欄には、ヤングケアラーたちの複雑な感情が表れていました。ケアラーであることを周りに知られたくない、自分の状況を話したくないと感じる子どもたちの声も多く、支援の在り方について慎重な対応が求められています。
埼玉県の今後の取り組み
- 支援体制の強化:
埼玉県は、ヤングケアラーを含めたすべてのケアラーに対して必要な支援が届くような体制を構築することを目指しています。全国的な支援体制の充実を図るため、引き続き具体的な支援策の検討を進めていく意向です。 -
全国への影響:
埼玉県の取り組みが国の政策にも影響を与えたことは事実ですが、今後は全国の自治体が一体となってケアラー支援を進めていくことが求められます。埼玉県のモデルケースが他の地域でも参考にされることが期待されています。
まとめ
埼玉県のヤングケアラー実態調査と支援策は、ケアラー支援の重要性を社会全体に認識させる重要な一歩となりました。ケアラー支援の体制強化に向けた具体的な動きが今後も続けられることで、より多くのヤングケアラーが安心して生活できる環境が整うことを期待しています。