教育学の良書

教員採用試験の合格が目的

教育学はたくさん本があります。どれも大切な一冊ですが、各大学の教育学部や教育学コースとは学校教員の養成と教員採用試験の合格を目的とするファカルティになります。どのような答案を書けばいいのか大雑把な雰囲気を理解するには教員採用試験の対策本を一冊持っておくと便利かもしれません。解答の方向性の良し悪しを確認する目的で教員採用試験の対策本を一冊持っておくとよいでしょう。なるべく自己流の解答は避けたいですからね。自分の考えを述べるときに自己流になってしまわないようにするためには、専門書の件(くだり)を丸暗記するのも一つの手法になります。

技術的な話として「中庸」

保守的な民族主義の考え方と、革新的な民族融和の考え方は本来相反するものですが、解答として中庸(どちらも程々に取り入れたもの)を目指すことが望ましいです。たとえば「日本人の先生が日本語で教えることが日本の教育だ。」という考え方が先行する人は、「ブラジルから来た転校生が教室で生徒の輪に入ることにどんなことを気を付けるべきか」を真剣に考えたほうがよいです。逆にコスモポリタニズムの考え方が先行する人は、「日本人の輪の中に入る」という点に対応してくことになるでしょう。また、制度設計の話題、このような「制度」を新しくつくれば皆が幸せになれるはずだ、という思考ももちろん大切です。しかし現実に起きた課題や問題点は、どんなに詳細に分析しても、分析が終わったということはありませんから、既存の制度で一人称で具体的にどう立ち向かうのかにも力点が置かれます。

小論文は体験談ではない

学校というものを一度体験しているので書けることはたくさんあります。部活動など「知っている」ということになると思います。しかし「知っている」と「俯瞰的に知っている(birds view)」とは違います。一人称と言いましたけど個人的に思うことを自己流で書いてねというわけでは全くありません。つまり事例研究ということです。

過去問題を分析する

教育学は大学によって出題されやすいテーマや出題形式が大きく異なってきます。志望校の過去問の入手は他分野に比べて徹底して行ったほうがよいです。大学を越えて出題されるテーマとしては、近年では「共生社会の実現に向けて」という大きなテーマが大学を越えてうねりをあげて出題されています。キーワードとして「多文化共生(同志社大学社会学部教育社会学科で出題確認)」「インクルーシブ教育(関西大学文学部教育文化専修で出題確認)」など共生社会の実現に向けた様々な議論が出題されやすくなっています。その一方で、「部活動」、「いじめ」、「非行」など、(並べてしまったことに他意はないですよ)主流な話題を出題する大学もあります。教育心理学の用語(「愛着」「ピアジェの発達段階」など)が出題される大学もあります。

良書の紹介

必須:『現代教育概論 第5次改訂版』 佐藤 晴雄 (著)

良書と言うか必須です。特に教育学の本を探すと言って偏った本としか巡り合えていないひとはこの本を必携にしてください。過去問題で出題される用語の遭遇率も高く、何より内容が真実すぎる。非常に基本的な内容から勉強できるので、この本が手に入れば予備校要らないと思います。難しくても調べものをしながら無理矢理読んでください。受験対策は、この書籍を起点として不足を補っていきます。

入門:『やさしい教育原理 第3版』田嶋 一 (著), 中野 新之祐 (著), 福田 須美子 (著), 狩野 浩二 (著)

とても読むやすい本です。読めば先生の目線がわかってくると思います。人間誰しも人を教育する機会はあったりする人生ですが、学校の先生ってなんだろうな、学校ってなんだろうなという大変初歩的な所から丁寧に教えてくれます。

ケーススタディ:『現代社会と教育』汐見稔幸 (監修), 奈須正裕 (監修), 酒井 朗 (編集)

とても読みやすい本です。網羅性が高く、小論文の書き方は、それはそれとして、出題されるネタについて前もって知識を充填したい人は読むと良いと思います。2021年出版の本なので、最新の部類ですね。

部活動:『部活動って何だろう?―ここから変えよう』 しんぶん赤旗「部活って何」取材班 (著)

良書です。しんぶん赤旗が出版しているからと言って日本共産党の宣伝ではありません、とても良い本です。「部活動」や「教職員の多忙化」など過去問題で出題されたテーマも掲載されています。読みやすい本なので是非一読してください。自分でも体験したことのある話題だと自分の体験談になりがちですが、先ほど述べた通り事例研究と言うことになるので大変参考になる本です。

社会学:『現代教育社会学 (有斐閣ブックス)』 岩井 八郎 (編集), 近藤 博之 (編集)

若干古い書籍ですが、内容がわかりやすくておススメです。アイデンティティや社会階層といった社会学の守備範囲に落ちるテーマで学校や学校教育を論じています。そういった書籍の中では内容に納得の行きやすいバランスの良い言い回しで書かれているので読みやすいものだと言えます。第十章「メディアと青少年」を読むとわかりますが、やはり古い本なのでSNSやスマートフォンといった最新のThingsが登場しない内容になっています。10年以上前の書籍なので各章に対応する最新動向をGoogle検索でもよいから確認してノートを作ろうとすると、さらなる良書に巡り会えるかもしれません。

心理学:『やさしい教育心理学 第5版 (有斐閣アルマ)』 鎌原 雅彦 (著), 竹綱 誠一郎 (著)

出題範囲に教育心理学がないファカルティの受験生にも、息抜きに読むにはちょうど良い難易度です。過去問題で出題される用語の遭遇率は高く、勉強に疲れた心理学志望の受験生にも読んでもらいたいくらい良い本です。

小論文対策:『小論文これだけ! 教育深掘り編』樋口 裕一 (著), 大場 秀浩 (著), 大原 理志 (著)

小論文の対策は樋口シリーズはおススメです。賛成と反対の両方があるテーマではそれぞれに例が書かれているため大変勉強になります。自分で書いた小論文は、家族や友人に頼んで読んでもらうと上達します。自分では上手く書けているつもりでも難解になってしまうことは多々あります。

選書のすゝめ

本は自分で選ぶという人にも知っておいて欲しいことは下記です。

  • 本を読んで何を身に付けたらよいのか見当をつけてから探そう(そのさい過去問の出題が根拠であるほうが望ましい)
  • カッコ良さを諦める(こんな難しい本で勉強する僕、超イケメン!などの感覚で本を選ばない)
  • しかし、最低1冊は読破に30日かかる難読書をチョイスする(筋トレと一緒です)
  • ケチらない(結局読まなかった本がある編入合格者はかなりいます)

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