メルタポ

とある喫茶店。
学校帰り。
高校生。
今津琢磨(いまずたくま)という。
ガールフレンドと会っていた。

琢磨は。
ある悩みを打ち明けようとしていた。

詫摩は。
高校生にしては大柄。
中学では柔道。
高校ではラグビー。
そんな質実剛健な自分の中にもう一人の自分、裏人格がいることを大切なガールフレンドには打ち明けたかった。

詫摩は。
なかなか打ち明けられなかった。
「数学のテストでまた再テストに呼ばれてしまった、とても難しい問題で50点以上取れる気がしない・・・なんで医学部や東大を受ける人と私文志望者が同じ数学の勉強を強いられるんだろうか。」
そんな話ばかり。

ガールフレンドは言う。
「そうやって会話のネタを考えてデートするときは必ず大事な話があるよね?」
「今日はなんだー?」

ガールフレンドの名は支倉亜美(はせくらあみ)
もともと中学の同級生だった。
大柄な琢磨と給食を食べるのがとても好きだった。
向かい合った姿が朝食の父親に似ているからだ。

詫摩は決心して言った。
「亜美、俺、気づいたんだ。俺の中にもう一人の俺がいる。」

すると。
亜美は笑った。
「そんなはずないじゃん、琢磨は琢磨だよ?いろんな琢磨を見たけど、なにやっても真面目じゃん、また何か別のことで悩んでるんでしょ?」
亜美は楽しそうだ。
亜美は悩みを打ち明ける琢磨が一番好きだった。
確かに悩みを打ち明けているときが一番人柄がでている。

詫摩は。
「いや、こないだ便座を壊してしまったんだ。ふと気が付くと便座が壊れていた。もう一人の俺が壊したんだきっと。」
真剣に話した。

亜美はおどけてみせた。
「えー!そんなアブナイ人とお付き合いできない!もう一人の琢磨が本当の琢磨なんだ!超アブナイ本性なんだよ!柔道とかラグビーとか危険なスポーツ大好きだし!」

気が付けば他の客も。
心なしか二人に耳を澄ましているのか。
地味な静寂の中。

「なんてなー!ははは、私だって便座ぐらい壊せるよ!大丈夫!寝ぼけてたんだよ!」

詫摩は言った。
「メルタポ」

「え?」
「メルタポっていうんだ、そいつ」
「は?」
「名前があるんだ」

亜美はキョトンとした。
いつものセンスじゃない。

「妹にもこないだ打ち明けたんだ。もう一人の自分。したら小さい時に『メルタポ』っていう別人がいじめっこを木端微塵にやっつけたことがあるって。」

「メルタポ?」

「う・・・うん。」

「メルタポー」

「あぁっ・・・やめてくれ呼ばないでくれ、呼ぶと出る・・・」
「?」
「大切な人に呼ばれるとメルタポが出そうになるんだ、妹に『メルタポ』って呼ばれたときも危うくメルタポになるところだった・・・うぅ・・・」
「さっきからメルタポ、メルタポ、自分で言ってるじゃん?」

「うぁ・・・ごめん・・・本当にやめてくれ、メルタポが外に出たがっているんだ、それでメルタポ・・・メルタ・・・」

「そっか、ごめん琢磨・・・」

「ああ、俺は琢磨だ。琢磨って呼んでくれ、琢磨って呼ばれれば、琢磨でいられる・・・」

次の瞬間、喫茶店の誰もが聞こえる大声で鳴り響いた。
「メルタポーーーーー!!!!」
亜美は叫んだ。

「010111010101010101010?」
「011111010101011111100。」
「001010101010、0101010101010。」

「え?」

「111111111111111111!!!!!」

「うん?」

「111111111111111111!!!!」

琢磨はメルタポになった。

「なんて言ってるの?・・・琢磨?」
愕然とする亜美はかすかな声で言った。

「10101010101010ア0101001010」

「あ?・・・琢磨・・・しっかりして・・・」
「琢磨・・・ごめんね、元に戻って琢磨・・・」

「11111100010101010・・・アミ・・・11110000001・アイティティティル・・・」

「・・・うん、私も琢磨を愛してる。琢磨!琢磨!」
「たーくーまー!」

再び大きな声が鳴り響くと、琢磨は琢磨に戻った。
そして力いっぱい亜美を抱きしめた。

おしまい

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