悪人

病床の男性。
医師から一ケ月後の死を宣告されていた。
彼が唯一その時間を過ごす動機が。

友達。
若い女性の友人だった。
来る日も来る日も男性と会話。
そのために小一時間やってくる。

女性は。
自分の将来や。
生きていたらこんなことができる。
生きていたらあんなことができる。
そんな話ばかりをする。
もうすぐ死ぬ人間に。
ハッと気づいてわざとらしく申し訳なさそうにする。
そんな素振りまで。

ある日。
男性の容態が急変した。
そういえば宣告から二十日。
その時が来たのだと。
賢明な男性は思った。

女性は。
かけつけてきた。
若い女性の若い友人達と共に。
やってきた。

管につながれた男性の前で。
会食。
賑やかな雑談。
酒席だった。
どんちゃん騒ぎだった。

女性は。
直接男性に言い始めた。
もうすぐ死んでしまう貴方のための。
お祝いです。
貴方と話していてこれが嫌だった。
貴方と話していてあれが嫌だった。
けたたましいサイレンの口調。

男性は。
すっと目を閉じた。

そして想った。

彼女がもしも。
とても残酷なことをしているつもりならば。
彼女は死を知らないな。

おしまい

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