過去問・関西大学社会学部メディア専攻(3年次編入試験・2018年度)

※この解答例は最新の動向が反映されていない可能性があります!

インターネット上における「フェイクニュース」について、近年の事例を1つ以上挙げながらあなたの考えを述べなさい。

解答例(最終更新:2021/1/6)
以前に大リーグのイチロー選手が、記者から「錦織(圭)がすごく海外のメディアで評価されていますね」と言われたさい、イチロー選手は「こっちのメディアがどうとか関係ないですよ。日本のそういうところは大嫌いですね。こっちのメディアで騒がれているから日本人が騒ぐみたいな、そういう順番はめっちゃダサいです」と話した。このやり取りが「まとめサイト」なるところでは「イチローが反日発言!」といった見出しの記事になった。

こうしたインターネット上のフェイクニュースの流布は、そのぶん真実の情報への接触を困難にするから、解決すべき問題と思われる。ここでフェイクニュースを配信する人達(フェイクニュース作家)は、政治的野心や特定の人物に対する憎しみに起因するのではなく、金銭を稼ぐことを目的としている場合がほとんどだ。それは広告収入だったり、もっと露骨に、利害関係者からの報酬だったりする。フェイクニュース作家が営利を目的としているのならば、実際にフェイクニュースが掲載されるソーシャルメディアの運営者側からの罰則的課金、ポイント(企業通貨)の没収や広告掲載の中止など、フェイクニュース作家への経済的制裁は効果があると思われる。

しかしフェイクニュース作家に罰則を設定する動機が、肝心のソーシャルメディア運営者側にとって、乏しい、この現状が問題の解決を遅延させる。どういうことかと言うと、フェイクニュースが掲載されても、そのソーシャルメディア(上述の「まとめサイト」など)を利用するユーザは、あまり減らない。なぜならメディアリテラシーの高いユーザ(フェイクニュースを虚偽と見抜く能力があるユーザ)、あるいは、そう思っているユーザが存在し、彼らが利用し続けるからだ。彼らは正しい情報を取捨選択できると思って情報源として信頼したり(イチロー選手が反日発言をするはずないだろう)、あるいは、もっぱら冗談に出会うための遊び道具(ネタ)として利用するのだろう(イチロー選手が反日発言をしたら面白い)。もちろんこのときメディアリテラシーの低いユーザは、フェイクニュースの蔓延したメディアを利用することになるから、上述の通り、フェイクニュースの流布は解決すべき問題である。

もしも然るべき当局からソーシャルメディアの運営者への罰則があるならば、ソーシャルメディア運営者もフェイクニュース作家に対して徹底した対策に動き出すかもしれない。実際にドイツやフランスなど、欧州では罰金を科すなど法整備が進んでいる。2018年7月、ドイツ連邦議会(下院)総選挙に向け各党が選挙戦を本格化させた時期に、フェイクニュースがネット上に拡散された。イスラム教徒排斥を訴える右派政党「ドイツのための選択肢」は、党のフェイスブックに「村祭りがイスラム教の痴漢パーティーに」と書き込み、党への投票を呼びかけた。このフェイクニュースの総選挙への影響を非営利団体などが主体となって調査した結果、放置したソーシャルメディア運営者に対して66億円の過料が科せられた。こうした賞罰の事例が、ソーシャルメディア運営者の規範、すなわちルールを作っていこうという意識を形成しながら、フェイクニュース作家への対策を促すことになればよいと思う。

【参考:『ポピュリズム政治にどう向き合うか (メディアの在り方を考える)』p87-97 著:新聞通信調査会】
【参考:2018年4月26日毎日新聞紙面「フェイクニュース規制海外事情 深刻なうその拡散、言論統制の懸念も」】
【参考:「日本でもフェイクニュース対策」https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2019/fis/kiuchi/0131

【関連する発展的な出題】埼玉大学教養学部現代社会専修課程(3年次編入試験・2021年度)「ソーシャルメディアで流通する情報のなかには、社会的な規範やルール、常識や倫理に反する情報、あるいは事実に反する誤った情報など、問題のある情報が多く含まれている。最近になって、こうした問題を含む情報やアカウントを、ソーシャルメディアの運営者やプラットフォームが削除したり、規制しようとする動きがある。この動きについて、あなたの見解を述べよ。」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA