過去問・中央大学法学部(3年次編入試験・2018年度)

国際的側面を含む法学一般(国際企業関係法学科)

下記の例を参考に、(1)および(2)について論じなさい(二問必答)。

日本は、1972年に、日中共同声明に調印し、中華人民共和国が「中国の唯一の合法政府」であると宣言した。これにより、日本は、それまで中華民国(台湾)が中国の合法政府であると承認していたのを、中華人民共和国に対する承認に切り替えた。また、日中共同声明の中には、次の文言が入っていた。
『中華人民共和国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この通貨人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重・・・する。』

(1)国家性を有する領域的な実態に対して他の国家が承認を与えることは、国際法上、どのような法的効果を生じるか。
(2)ある国家が分裂している状態で、その国において対立している甲政府から乙政府へと他の国家が承認を切り替えた場合、承認国の国内で甲政府が所有していた不動産は、乙政府の所有となるか。

解答の着想

1.
現代国際社会では、民族自決原則が基本原理であり、これは国際法上の基本原則です。民族自決原則とは、各人民が自らの政治、社会体制を自由に決定できることをいいます。国家承認には、国家の成立に第三国の承認を要件とした創設的効果説、または第三国の承認を要件としない宣言的効果説とがありますが、現代国際法では宣言的効果説が妥当との見方が増えています。

2.
有力国の承認や承認数の多さが国際的な正当性を高め、同時に国内的な政権基盤が強化されることは間違いないですが、これは法的ではなく事実において承認が国家を創設する要素をもっていることを意味します。

3.
創設的効果説には、ある国家が国際社会の一員になる要件を満たしているかを、既に国際社会の一員である第三国が判断することに本来的な意味があります。特に19世紀においてはヨーロッパ諸国の承認ではじめてヨーロッパ地域外の国は国際法上の国家として成立しました。しかし現在は、たとえば国連への加盟は全加盟国の承認によらないなど、国際社会へその一員として加わることに承認の必要はありません。

4.
承認は国際法上の法的意味よりも国内法上の法的意味のほうが非常に強いです。日本は北朝鮮を国家として承認しておらず、日本国内で「朝鮮民主主義人民共和国国籍」というものは存在しません。

5.
各国がどのような政府を有するかは当該国家の主権的事項と考えられます、そのため第三国の政府承認も、民族自決原則に従えば、宣言的効果説が有力だと考えられます。

【参考:『講義 国際法 第二版』p133-p144(著:小寺彰、岩沢雄司、森日章夫)】

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