農業経済学

農業

農業は一国の経済に欠かさない産業である。農生産物の需要は所得水準が上昇してもあまり伸びない、しかし農生産物である食糧は人類の存亡に不可欠なものであるから、農業が経済産業として消滅することは有り得ない。そのうえで、発展途上国で農業は特に重要な産業である(極端な話、完全な自給自足経済では全員が農業従事者である)ことも踏まえれば、非農業部門の形成(工業化、都市化)においては、農業部門を起点とする資本蓄積が必要不可欠なのではないかと考えることができる。産業革命期の都市部資本主義社会成立には、協奏する農村資本主義経営の成立が、もしかすると社会変動の両輪だったのではないか(いましがた述べた理屈でもって)と想いを馳せることもできる。

実際、農業の成長と経済成長には正の相関がある、ここで、「農業の成長」をどう定義するかは議論の余地がある。

  • 生産性の向上
  • 生産規模の拡大
  • 生産活動の外部性(環境問題)の処理能力
  • 生産物を取引する市場の形成と拡大(貿易など)

…ほかにもあるだろうか。

市場

農業生産に必要な要素を、土地と労働の二変数と考えてみよう。生産要素ということになるが、生産要素の取引市場を農村市場と呼ぶことにしよう。農村市場とは、小作人と地主が、「地代(詳細後述)」を条件に取引する、

  • 小作人:土地で、雇われて農作業をする人
  • 地主:土地の所有者
  • 自作農:ある土地について小作人であり、かつ地主でもある者
  • 固定地代契約:小作人が定額の地代を支払う。不確実性(詳細後述)は小作人が引き受ける。※小作人が買手、地主が売手、財は土地。
  • 固定賃金契約:地主が定額の賃金で小作人を雇う。不確実性(詳細後述)は地主が引き受ける。※地主が買手、小作人が売手、財は労働力。

不確実性とは、天候を理由に収穫が左右されること、など。

分益小作制

収穫を一定の比率で、小作人-地主間で分け合うこと。有限責任(limited liability 固定地代制で不作時の地代支払いを一部免除または貸付で処理する)などと同様に、収穫の不確実性の負担がワンサイドにならないようにする考え方によるもの。ダブルインセンティブ(小作人と地主の双方が農業生産性の向上に努める動機をもつこと)の観点から支持される。しかし、小作人の所得水準上昇、農村金融の発達、生産の技術面での改善、向上、農業組合の設置(労働組合で小作人たちが交渉力を高める)などで、分析小作制は意義が薄れていった経緯が現実にある、

ストラクチャー

金融

1950年代以降で、化学肥料や農業機械導入のための資金需要から、世界各国で農業開発銀行が設置されていくが効果は限定的だった、そもそも小作農が公的融資の対象から除外されていたり、そのようにして意図的にリスク層を対象としたことで貸し倒れも横行したりしたため。その後、1980年代以降になると途上国で農業従事者をターゲットとする金融自由化と金融市場の整備が盛んになる、しかし逆選択やモラルハザードなど教科書的な課題に直面していった。

組合

農作業以外であれば、共同作業といったときに、経験的にはあまりインセンティブの問題が起きなかったことから、小作人らで農業組合を形成することが先進国で広く採用されてきた。

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