過去問・神戸大学農学部食料環境経済学コース(3年次編入試験・2018年度)

中山間地域は、わが国の人口の1割を占めるにとどまっているが、耕地面積と農業産出額の4割を占め、農業生産の場として、さらに農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮の面でも重要な役割を担っている。しかし、中山間地域は様々な問題を抱えており、地域の活性化と農業の振興が課題となっている。そこで、中山間地域が抱える問題を一つ挙げて、その解決のためにあなたが考える取組について具体的に述べなさい。

解答の着想
1.
日本の基幹的農業従事者の平均年齢は67歳を超え、65歳以上が6割を占めると言われている。他の先進諸国と比較しても異常なほど高齢化しており、若者や女性の農業への参画をいかに促していくかが課題である。中山間地域は特に過疎化の問題も抱え、農業・農村のもつ多面的機能を維持しながら人を集めていく画期的な方策が求められる。

2.
農業をより魅力的にする試みのなかで、近年に期待されているのが「スマート農業」である。スマート農業とは、ロボットやIT(情報技術)、AI(人工知能)を駆使して農業の省力化や高収益化を進める試みである。2019年3月にはスマート農業の実証実験を行う69件の農場(うち中山間地域30件)が農林水産省により発表された。

3.
「農泊」「グリーンツーリズム」も解決方策として期待されている。すでに余暇活動としての農村体験にはニッチな人気がある。現状でも一年を通じて宿泊客は訪れていて、リピートする若者も少なくない。今後も宿泊客が増えれば、観光バスとマイカーが主流だった現地までの移動手段、その確保のため、路線バスの拡充が期待できるだろう。そうなれば交通の便の悪さが公共サービスの妨げとなっていた地域はより魅力的になるかもしれない。

★アドバイス★
農業経済学を志望する人はもちろん、経済学、経営学などを志望する人であれば「農業・農村の多面的機能」を専門用語として覚えておきましょう。食料自給の観点からも農業・農村を保全することは国の緊急課題です。だから、たとえば人口問題や地方創生などが論題となった場合でも、農業・農村の保全と対立するような論述、とても極端なことを言うと「農村を商業施設にする」などは、あまり評価されないと思ってください、逆に「地方の経済を開発するとしても、農村など、その多面的機能から保全が優先される地域とは共生していく必要がある」といった記述をさりげなくできるとアピールになると思います。

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